日中経済協会上海事務所 大分県経済交流室 駐在員レポート

中国国際輸入博覧会に込められたメッセージ

日中経済協会上海事務所大分県経済交流室
(大分県上海事務所)難波 一尚

11月5日から10日、世界各国から中国への各種輸入品・サービスを展示する見本市「第一回中国国際輸入博覧会」が上海で開催されました。


博覧会の目的

この博覧会は、2017年5月、北京で開催された一帯一路国際協力サミットフォーラムにおいて習近平国家主席が発表したもので、世界各国との経済交流・協力を強化するとともに、世界の貿易と経済成長を促し、開放型の世界経済発展を促進するという目的で開催されました。

初日の11月5日に行われた習主席の基調演説の中で「今後15年間で30兆円ドルのモノと10兆ドルのサービスを輸入する」との表明があったとおり、この博覧会は中国の購買力を世界へアピールする場となりました。また、奇しくも米中貿易戦争の最中に開催されることとなったため、米国との摩擦を軽減する意図もあったと言われています。

中国で過去最大級の規模

会場は上海市内にある国家会展中心(National Exhibition and Convention Center)で、展示スペースの面積は24万㎡にも及びました。会場内は輸入品・サービスの分野により7ブロック(サービス貿易、自動車、ハイエンド・インテリジェント機器、消費者向け電子製品、服飾・日用品、医療機器・医薬保健、食品・農産品)に分けられ、製品やサービスの展示が行われたほか、各国が経済・貿易の特色を展示する「国家貿易投資総合展」も行われました。

世界172の国・地域から約3,600社が参加。日本からは各国・地域で最多の約450社が参加しました。バイヤーなどの来場者は6日間で40万人と見込まれています。各分野のバイヤーや一般参加者の来場で会場は賑わっていましたが、食品ブロックの試食ができるブースでは混雑が発生する場面も見られました。

大分の企業が出品したブースも多くの来場者で賑わった。

開催に当たって上海の空港では、入国審査場に参加者専用レーンが設けられ、上海市内の市政府機関や学校、社会団体などは、開催初日と2日目が休日となるなど、国を挙げての大規模な行事であったことがうかがえます。

中国ハイテク産業のショーケース

これだけ大規模で、多くの政府要人も参加する行事だったため、期間中は会場周辺に交通規制が敷かれるなど、セキュリティ対策もしっかり行われていました。その中で興味深かったのは入場ゲートの顔認証システムです。入館者はすべて登録が必要となっており、事前に個人情報のほか、顔写真データを提出します。入場ゲートに設置されたカメラでこの顔写真データと本人の顔を瞬時に照合し、ゲートを通ることができるようになっていました。

また会場は、アリババが手掛ける宅配ができるスーパーマーケット「盒马鮮生(フーマーフレッシュ)」や、ロボットが配膳をするレストラン「ROBOT. HE」が出店している場所でもあり、来場者は博覧会期間中にそれらを実際に利用することで、中国におけるハイテク技術の応用や普及を体験し、技術大国へ向けて躍進する中国が印象付けられたのではないでしょうか。

会場内にあるスーパー
「盒马鮮生」
レストラン「ROBOT. HE」ではカプセル型のロボットが配膳する。

おわりに

市場開放と輸入拡大の意思表示であり、市場としての魅力を世界にアピールする場であった博覧会が終わって2週間がたった11月28日、東日本大震災福島第1原発事故をきっかけに続けられていた日本の農産物の輸入規制が一部緩和され、新潟県産の米の輸入が許可されました。

今年は日中平和友好条約締結40周年の節目に当たり、相互の要人の往来も活発になっています。日本の農産物のほとんどが実質的に輸入禁止となっている中、米の輸入規制緩和はごく一部のものですが、これまで日本の政府や経済団体が行ってきた要請を受けた中国側の対応であり、貴重な進展だと思います。

今回の輸入博覧会のような動きを通じて、日中の貿易関係がどのように進展していくか引き続き注視していきたいと思います。

なお、中国国際輸入博覧会は来年も上海で開催される予定です。

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