日中経済協会上海事務所 大分県経済交流室 駐在員レポート
「中国への輸出拡大について」
上海逍龍信息貿易有限公司 王宮予総経理インタビュー

【はじめに】

県も海外への輸出拡大に取り組み始め、かなりの時間が経ちます。中国は富裕層が多く、しかも巨大マーケットということで一時大きな注目を集めましたが、最近は両国関係の冷え込み等もあり、以前のような熱気は冷めてきたようにも見えます。しかし、中国市場で売れている地方輸出産品も確かに存在し、今後中国の中間層が更なる消費力をつけていく中、一旦市場において認められたなら更なる輸出拡大が期待できることも事実です。

今回は上海の大手日本食品輸入貿易会社である「上海逍龍信息貿易有限公司」王宮予総経理に中国市場で売れる日本商品の特徴や輸出を目指すメーカーはどのようなことに取り組むべきなのか等についてお話しを伺いました。


「王総経理の経歴をお聞かせください。」

「上海師範大学化学学科を卒業後、上海軽工業局職業大学で化学教師として8年間勤務しました。その後、日本との合弁会社の上海事務所やアメリカ系の貿易会社などに勤務し、1996年に上海逍龍を設立しました。」 


上海逍龍信息貿易 王宮予総経理

「食品輸入、なぜ特に日本食品の輸入を行うようになったのか、そのきっかけ、理由を教えてください。」

「日本との合弁会社に勤務しているときに日本の食品に触れる機会がありましたが、女性消費者の目から見て、そうした日本の食品の綺麗さに一目惚れしました。日本の食品のパッケージの美しさ、品質、味は必ず中国の消費者に受けられと感じました。特に、日本の食品は安心安全というイメージがあり信頼できますし、健康を気にする中国消費者のニーズにもマッチしています。中国経済は発展しており、次第に消費者が購買力を着けていけば、いずれ輸入食品、特に日本の食品を買うようになると確信しました。独立し会社を立ち上げた当時は不安もありましたが、運に恵まれたことと、中国の消費者ニーズにマッチすると見た直感が当たったのでしょう。今ではこれだけ会社を大きくすることができました。」 



インタビューに応える 王総経理

「中国で受け入れられている日本食品には何か特徴があると思います。どういった商品が売れるのでしょうか?」

「一つはパッケージが魅力的というのが挙げられます。もちろん味もそうですが、体に悪いものは使っていないという安全性も必要です。具体的には、お菓子類だとビスケット、飴の売上は比較的好調です。国内の同種のものに比べ味が格段に違います。そのほか調味料関係では、さしみ醤油とわさびもよく売れています。値段的にはやや厳しいですが30元以下というのが第一段階の目安です。それより高いものは売れないことはありませんが、商品の特徴をうまく前面に出していかなければいけません。現在は日本から中国への乳製品の輸入は一時的に止まっていますが、将来解禁になれば必ず売れるだろうと思っています。」


「上海逍龍は大分県内の企業では「富士甚醤油」、「JAフーズおおいた」、「四井製麺工場」、「マルトウ物産」の商品を取扱っていますが、それぞれどのような点を評価しているのでしょうか?」

「富士甚酱油」の製品は、品質の良さに加え、早い時期から上海市場で売っており、ある程度の知名度があります。「JAフーズおおいた」の商品のパッケージは大変綺麗で中国の消費者に人気です。乾麺は中国でよく売れる商品の一つですが、「四井製麺工場」の製品は輸入品としては手頃の値段という点がポイントです。「マルトウ物産」の商品はやや値段が高めですが、パッケージが贈答用向いています」


上海逍龍信息貿易が取り扱う大分県産品の一部

「上海逍龍が取り扱っている日本商品を買っている消費者はどのような階層の方々でしょうか?」

「ひと言で言えば、富裕層と中間層のホワイトカラーということになるでしょう。富裕層の定義はいろいろとありますが、私がイメージするのは、年収30万元(約500万円)以上の管理職クラスです。中間層は月収5千元から1万元(約8万5000円~17万円)のホワイトカラーです。特に中間層は今後益々購買力を着けていきます。また、そうした家庭の子供が消費する量も無視できません。親が子供に安全安心の観点から日本食品を買い与えると、子供もその商品のリピーターになる傾向があります。そうした売り上げは、今は全体の15~20%を占めていますが、これから益々増えてくると思います。」


「中国はトップの富裕層に続き、中間層が消費力を伸ばしていると言われますが、今後、中間層が値段の高い日本の輸入商品を買ってくれるでしょうか?」

「それは間違いありません。当社の商品も設立当初は上海の富裕層を主なターゲットとしていましたが、現在では北京、広州などの大都市や南京、杭州、合肥など上海周辺の省の省都の高級デパート、高級スーパーなどで売られています。また、蘇州や無錫と言った都市の高級スーパーでも売られています。これまでの経験から上海で売れれば、他の都市でも間違いなく売れるという傾向にあります。」


「今後、王総経理が中国で受け入れられると思う商品はどのようなものですか?」

「まず、何と言っても安全でおいしいものということになるでしょう。健康に役を立つものも受け入れられます。ただ、問題は価格です。先ほども言いましたが、現段階では30元以下の商品がよく売れています。高くても50元以下というのが望ましいです。それからこれも重要なことですが、賞味期限か長くなければ在庫を持つことが非常にリスクになるため扱えません。よく言われることですが最低でも6か月の賞味期限がある商品であることが必要です。」  


「2012年の大規模な反日デモがあったのち、売り上げに大きな影響があったと思いますが、現在はどうですか? 回復にどれくらいの時間がかかりましたか?」

「これも日本お客さんによく質問されます。実際のところ上海ではあまり影響は出ませんでした。さすがに直後は日本製品を買うのを控えようという動きはありましたが、1か月もすると元に戻りました。上海以外の地域では少なからず影響がありましたが、そこも半年ぐらいで売り上げが回復しています。日本食品の人気は根強く、本当にそうした商品を欲している消費者は気にしていません。」


上海逍龍入口にて 兪副総経理(左 ご子息)、王総経理と

「中国への輸出を目指す日本の食品メーカーへのアドバイスがあればお願いします。」

「まずは商品が輸出に向いているものかどうかをよく検討することです。中国は富裕層が多いと言っても、やはり価格には厳しいところがあります。先ほども述べましたが。スナック類、特にビスケット、キャンディは人気があります。また、やや高くてもそれがその値段に相応しいというアピールをしっかりできる商品ならば売れる可能性があります。それから、中国市場のニーズをよく観察することです。人任せにせず、責任者が実際に中国市場を視察し、類似品がどれくらいの価格で実際に売られているのかを確認し、中国市場における自社製品の需要を理解しなければなりません。さらに、一旦採用されたら終わりというのではなく、貿易会社や小売店と共同したプロモーションを小まめに実施し、絶えず消費者に自社製品をアピールするという努力を惜しんではいけません。日本食品はヨーロッパとかアメリカでは主に日本・韓国食品専売の小型ス―パで売られています。しかし、中国ではハイクラスのスーパーやデパートで売られて、高級品として認識されています。この点を日本のメーカーさんには是非知っていただきたいと思います。大分県と弊社は長い間協力関係にありますので、もしやる気のあるメーカーの商品があればどんどん提案していただきたいと思います。もちろん全部採用することは無理ですが、商品に対するアドバイスなどできる範囲で協力します。」


「本日はどうもありがとうございました」

【終わりに】

このところ低迷気味の中国への輸出ですが、消費者が急速に消費力を着けているのは事実であり、上海などの大都市だけでなく、多くの場所で日本商品が受け入れられる条件が整いつつあります。今年度も県の中国向け輸出促進事業が準備されていますので、積極的な活用をお願いします。

(本稿は4月30日に行われたインタビューを八坂が編集したものです。インタビューの内容は個人の感想・意見であり、中国への輸出の成功を保証するものではありません。)


プロフィール

王宮予(おうきゅうよ)

上海市出身。上海師範大学化学学科卒業後。職業大学教員、外資系企業等の勤務を経て、1996年に日本の食品を専門に輸入する貿易会社「上海逍龍信息貿易有限公司」を設立。現在では同種の貿易会社では大手に数えられるまでに成長。北は北海道から南は沖縄までほぼ全県の商品を取り扱う。取扱商品もNBブランドではなく地方の中小メーカーの商品が中心である。趣味は旅行で日本やヨーロッパがお気に入り。特に日本へは1年に5回以上仕事も兼ねて旅行している。また、流行のファッション、グルメなどにも関心が高く、ファッション雑誌の購読や食べ歩きなどを日課としている。


【 もどる 】    【 Top 】