日中経済協会上海事務所 大分県経済交流室 駐在員レポート

中国へのサービス業進出について
上海木須餐飲管理有限公司 宮本慎也 総経理 インタビュー

【はじめに】

今回は、皆さんよくご存じの「寿司めいじん」の中国現地法人総経理の宮本慎也さんへのインタビューです。上海では中国系や台湾系、日系などたくさんの回転寿司屋がひしめき激烈な競争を展開しています。その中で店の特徴を打ち出し上海の消費者にアピールしていくのは容易なことではありません。そうした状況を「寿司めいじん」はどのように克服し、上海の飲食業界の中で生き残っていこうとしているのか、お話をうかがいしました。


「寿司めいじんについて簡単にご紹介ください。」

「(株)めいじんは、回転寿司チェーン「寿司めいじん」を中心に、焼鳥専門店「鳥ざんまい」や天ぷら「天風」といった飲食店をチェーン展開しています。1980年に大分初の郊外型回転寿司店を誕生させたのを皮切りに成長を続けてきました。地元大分を基盤に現在は九州、中国地方などを中心に約50店舗を展開しています。2012年5月に中国上海市内に海外初進出となる「寿司名人久光百貨店」をオープンし、2013年7月には2号店となる「寿司名人尚嘉中心店」をオープンしました。」

宮本総経理

「寿司めいじんが上海に進出しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?」

「もともと弊社は経営理念の1つに「世界進出」を掲げています。社長の木須も何年も前から中国や他の国を視察していましたが、2011年に上海市内のちょうどよい物件の紹介を受け、上海進出を決定しました。1号店の物件の選定にはかなりの時間を費やしたかと思います。」

「物件選びに時間をかけたということですが、物件選びに大切なことは何でしょうか?」

「上海市内であれば、ある程度成熟したショッピングセンターがよいと思います。しかし、毎年多くのショッピングセンターが建設されており見極めが必要です。また家賃も年々上昇していますので、決めた物件地域の家賃上昇率も頭に入れていないと後で大変な目に合います。」

「現在の上海の寿司めいじんの状況はいかがですか?日本人客と中国人客の割合、嗜好の違い、売れ筋メニューなども教えてください。」

「現在上海市内に2店舗ありますが、1号店はおなじみの回転寿司「寿司めいじん」、2号店は寿司・しゃぶしゃぶ食べ放題「寿司めいじん」と業態を変えて運営しています。1号店は9割以上が中国人のお客様ですが、2号店は中国人客が7割、日本人客が3割という感じです。日本のお客様の場合は「マグロ」、「真鯛」、「ブリ」、「ヒラメ」など、どちらかというと白身系やマグロ類が好きという方が多いと思います。しかし中国のお客様は「サーモン」、「うなぎ」、「フォアグラ」など味がしっかりとわかり、色味が強いものを好む傾向にあります。上記3種類のほかに「炙り寿司」や「ロール寿司」等が売れ筋です。」


2号店の食べ放題セット

「中国でも多くの寿司店、回転寿司店があると思いますが、寿司めいじんは何を売りにして他店との差別化を図っていますか?」

「メニュー構成で差別化を図っています。普通の回転寿司の場合だと「握り寿司」がメインになっていると思いますが、弊社の場合「握り寿司」と「一品料理」が半分半分の割合のメニュー構成になっています。鉄板焼きや麺類、揚げ物、ロール寿司などを豊富に取り揃えております。また、設備面でも日本ではおなじみのものですが、自動でお客様の元に料理が運ばれてくる「特急レーン」や「タッチパネル式注文」も取り入れております。恐らく「特急レーン」を採用した店は当店が上海初ではないかと思います。」

特急レーン

「中国での店舗運営で苦労する点は何でしょうか?」

「何といっても「人材教育」です。もともと飲食店で働きたいという方は日本と同じで少ないと思います。しかも全員が地方出身者で日本の飲食店など見たこともないと言う人がほとんどです。そんな従業員になぜ「いらっしゃいませ」を言わないといけないかを伝えるところからスタートします。料理の盛り付け方もそうですが、なぜ揚げ物にレモンが付いているのか、なぜ天ぷらに大根おろしが付いているのかなど、一から全て説明しないと分かってくれません。また2号店は2014年6月にリニューアルオープンしました。当初は1号店と同じ回転寿司だったのですが、こちらでは食べ放題に人気があるという事情もあり、食べ放題業態にチェンジしました。また、上海市内で日本人が多く住んでいる地域と言うこともあり、メニュー構成やレシピなども日本のお客様に合うように作っているため、現在では日本のご家族連れのお客様に多く来店していただいています。」


「よく駐在員はストレスの溜まるポジションだと言われますが、苦労を乗り切る心得、秘策があれば教えてください。」

「上海に駐在して1年半が経過しましたが、苦労を乗り切るのに一番大切なことは本社とのコミュニケーションと思います。中国事務所は現在日本人私1人ですが、最初の頃と比べて本社との連絡のやり取りはかなり増えました。1人で抱え込まずに、日本での経験を上海でも生かしていけばストレスも減ると思います。自分1人の手柄ではなく、日本・中国のチームめいじんとして中国ビジネスを大成功させられるように今後も頑張っていきます。」

インタビューに応える宮本総経理(左)

「県内から飲食業で海外に進出しようとする企業にアドバイスがあればお願いします。」

「中国ということで正直な話、最初はよいイメージがないかと思いますが、一度来てみればそんなイメージもなくなると思います。特に上海市は数えきれないほどの日本料理店や日系企業が進出してします。まだまだビジネスチャンスは無限に広がっている国なので、時間をかけて分析し、信頼できるビジネスパートナーを見つけ、現地の動向を掴むことから始めていけばきっと大きなチャンスが転がっていると思います。まずは現地に行ってみることから始めてはいかがでしょうか。」


「本日は大変ありがとうございました。」

上海寿司めいじん2号店で宮本総経理(左)と

【終わりに】

中国での事業展開のキーワードとして、またも「人材教育」という言葉が出てきました。以前、「上海うまや」の中井店長にインタビューした際も同じ指摘がありました。店の立地、現地パートナー、メニュー構成、店舗の雰囲気など、事業成功のカギは、たくさんあるのでしょうが、お客様と実際に接するのは現地の従業員であり、人材教育は絶対におろそかにできません。また、現地駐在員としての心得なども、海外に従業員を駐在させようという企業には参考なるのではないでしょうか。最後に、宮本総経理も指摘されているように、海外の情報を報道や人の話だけで判断せず、実際に現地に行って自分の目で確かめることが重要と思います。

(本稿は10月21日に行われたインタビューを八坂が編集したものです。インタビューの内容は個人の感想・意見であり、中国進出の成功を保証するものではありません。)


宮本慎也(みやもとしんや)

1987年生まれ。大分市鶴崎出身。大分東高校卒業後、KCS大分情報専門学校3年課程進学。2009年に㈱めいじん入社。居酒屋部門、農業部門に従事したのち、2013年4月に上海に赴任し、総経理に就任。

趣味は職業柄もあって「食べ歩き」で、上海市内の安くておいしい店を探している。座右の銘は「失敗を糧に出来た数だけ成長する」。 


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