日中経済協会上海事務所 大分県経済交流室 駐在員レポート
中小企業の中国進出について

上海総領事館の調べによると2010年末時点での上海市内の日系企業数は8,155社で、前年比で7.5%の伸びとなっている。日本の国内市場の縮小と、空前の円高によって、日本企業の中国進出は今後いっそうの増加が予想される。大分県の中国進出企業についても、これまで竹製品製造、服飾製造、運送など10社程度に留まっていたが、最近では、武漢にお菓子屋さんが出店し、上海と天津に回転寿司店が進出表明するなど、徐々に中国展開の動きが出てきている。県内企業の進出はさらに増えると思われることから、中国ビジネスを成功させるためにはどうしたら良いのか、県内企業の成功事例により考えてみたい。


【人気の高級玉子】

上海市内の有名百貨店や高級スーパーでは「蘭皇」、「蘭妃」、「蘭王」、「草蘭」というブランドの高級玉子が並んでいる。この玉子を作っているのは、日出町の(有)エビアン会長で、上海大鶴蛋品有限公司董事長の大嶋正顕さんだ(中国語に大嶋の「嶋」という字がなかったので「大鶴」となった由)。昨年から上海のみならず、北京や青島、成都の日系大型スーパーでも取り扱われるようになった。中国企業を中心に大嶋さんの玉子を仕入れたい、会社に投資したい、技術提携したい、といった引き合いも多いという。



【「中国人においしい玉子を食べさせたい」という思い】  

大嶋さんは、生で卵を食べる習慣のない中国で、中国人に生でおいしい玉子を食べさせたいという思いで2005年に上海郊外に鶏卵の製造・販売会社を設立した。当初、大嶋さんの玉子を買う人は日本人がほとんどだったが、今では95%以上のお客さんは中国人になっている。一時期、販路を失うという困難に直面した際には、玉子の存在を知ってもらおうと、タダで会社近くの住民や、農民工向けの弁当業者等に配っていた時期もあるという。在庫がたまって仕方なくやったことではあったが、結果的には、消費者が味の違いを分かってくれ、中国系スーパー等との取引もこの時期に始まった。


【真似できない技術・ノウハウ】  

大嶋さんの玉子は本当においしい。子供が最も敏感に反応する。黄身の柿色もきれいで、玉子特有の臭みもない。これは鶏に食べさせる餌を工夫しているからである。通常、養鶏業者は餌業者の餌を使っているが、若いころ、飼料会社で働いていた大嶋さんは、様々な材料や栄養素を配合して独自の餌をつくっている。どういった餌をつくれば、おいしい玉子ができるかが分かっているのだ。これは長年研究・開発をしてきたまさに技術そのものである。このため、餌の配合部門に配置する従業員は、会社の幹部と血縁関係にある者を充てるなどして機密保持には細心の注意を払っている。


【信頼できる中国人パートナー】  

大嶋さんのビジネスが順調に行っている大きな理由の一つが信頼できる中国人パートナーを持っていることだ。今、一緒に仕事をしている趙朝利さんと日本で出会わなかったら中国に会社を持つことはなかったという。中国で日本人関係者だけでビジネスをやることは不可能だ。大嶋さんは技術面でバックアップし、経営は趙さんに任せている。大嶋さんの技術と趙さんの販売力がうまく組み合わさって業績が伸びているのである。


【まとめ】

どこの国であろうと現地に進出して成功することはたやすいことではない。上記は一事例に過ぎないが、少なくとも現地進出を成功させるための必要条件は、①他社には真似できない技術・ノウハウ、②「中国の人々や社会のためになる事業を行おう」という高い志、②その志に共感する信頼できるパートナーではないだろうか。

   

(以上)

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