日中経済協会上海事務所 大分県経済交流室 駐在員レポート
競争激化する上海の外食市場

新年あけましておめでとうございます。昨年は、東日本大震災それに続く福島原発事故、欧州債務危機、円高、タイ水没と日本経済にとって過酷な1年となりました。今年は、こうした苦境から日本から立ち直り、「元気な日本」復活の年になるよう微力ではありますが、ここ上海で頑張っていきたいと思っています。さて、今年は辰年です。中国でも辰年は縁起の良い年とされていて出生率が上がります。欧州債務危機の影響が中国経済にも影を落としていますが、産業の高度化や、力強い内需により、2012年も中国が竜となり世界経済を引っ張って行く構図は変わりそうにありません。こうした中、今回は、内需に大きなインパクトを与えている外食市場についてレポートします。


【盛況なレストラン】

中国の経済成長とともに消費者の生活レベルも向上し、これに伴って外食市場が拡大していています。2010年の中国外食市場は1兆7636億元となっており、これは日本の外食市場に匹敵する大きさで、中国が日本の外食市場を上回るのも時間の問題といえます。

上海には日本食、中華、洋食、ファーストフードなどの世界中のあらゆる料理のレストランがあると言っても過言ではありません。またその数も半端ではありません。昨年4月から単身赴任になったこともあり、外食の機会がかなり増えましたが、上海のレストランはどこでも、いつでも客があふれているのには驚きます。私の住んでいるところの近くに、「龍之夢」というショッピングセンターがありますが、そこのレストラン街では、土日ともなれば、ほとんどのお店の前に長蛇の列ができています。


香港料理店の前で順番を待つ人たち ヌードルショップの前にも行列

【食生活・ライフスタイルの変化】  

経済成長により個人所得が上がるにつれて、炭水化物に代わって肉類や魚類、乳製品の消費が増えていきます。また、これまでに食べなかった中国の地域の料理や外国料理への関心も高まり、必然的にこうした料理を提供する外食の機会が増えるようになりました。また、若い夫婦を中心に家で料理することが減って外食するケースが増えています。ジェトロ上海事務所の中国人スタッフにインタビューしてみると、平均して1週間に夜3回ほど外食していることが分かりました。中には週6回は外食であと1回は母親が作っているというツワモノもいたぐらいです。


【日本料理の人気上昇】  

お昼は、同僚と一緒に職場近くのいくつかの日本料理店によく行きますが、この1年で大きな変化が起こっています。価格は40元~50元くらいするので、以前は、お店の客の8割以上が日本人だったのが、だんだん中国人が増えてきて、今では半分近くは中国人のお客さんになっています。少しでも出遅れると並ばないと入れない状況です。これは、所得が増えたことに加え、日本食が体に良いと考える人が増えたことや、訪日旅行で日本料理を体感した人が多くなっていることも関係していると思います。先日、スタッフから微博(中国版ツイッター)で中国人に大人気の日本料理店があるというのを聞いて、お昼に偵察に行ってみました。昼前というのに店内はほぼ満席状態。食べ飲み放題で300元(約3,600円)というシステムです。単品メニューもあるのですが、一品がとても高くて、食べ放題で頼む方がお得なので、ほとんどの客が食べ放題を選んでいました。店員さんによれば、夜の予約は1カ月先まで埋まっているそうです。「高くても本格的なものを食べたい」という層が着実に増えているようです。


店内は中国人で満席状態 テーブルには鍋や刺身が並ぶ

【日本企業の取り組み】  

上海には日本人なら誰でも知っているレストランがいくつかありますが、今回、上海市内にカレーハウスCOCO壱番屋を15店舗展開しているハウス食品(上海)の福田稔 総経理にお話をうかがいました。ハウス食品は日本式のカレーが中国で売れるかどうかテストしてみるために1997年にハウス食品の直営でカレーレストランをオープン。これで日本のカレーが中国人に受け入れられることがわかり、2004年には上海市郊外の工業区にカレーの生産工場を設立して、バーモントカレーやジャワカレーなどの生産を開始。合わせて㈱壱番屋と組んでカレーハウスCOCO壱番屋のレストランを設立し、順調に店舗数を増やしてきました。ターゲットは若い女性やカップルにしているので、店内の装飾は明るくしています。現在、お客さんの95%は中国人で、客単価は40元で、ミドルの中国人が「お昼に少し贅沢をしようかな」という価格となっています。店舗の増加に合わせて売上も毎年30%程度伸びているそうです。ただ、拡大する外食市場においては、競争も熾烈を極めています。現在、上海には日式の料理店・レストランが約1450店舗あり、1カ月間に30店が開店し、30店舗が廃業しているような状況です。福田総経理は、次のステップとしては、分厚いトンカツを使ったカツカレーや、高級な牛肉使ったビーフカレーなどの高級カレー店を新しいお店のブランドをつくって展開していくことや、フランチャイズによるチェーン展開、大手中国系食品メーカーとの提携などについても取り組んでいきたいと意気込んでいました。


中国人に受け入れられたCoCo一番屋 ハウス食品(上海)の福田稔総経理

【サービスで差別化】

大分県は、九州の他の自治体と連携して同じエリアで出展しました。とにかく温泉といえば大分県というイメージを持ってもらうため、ポスターやパンフレット、タペストリー、法被、エコバッグなどすべて温泉づくしでアピールしました。この日、来場した中国人は約2,000名で、大分県や別府市を知っている人は、前回同じ規模のイベントをした時より確実に増えている感じがしました。海山の自然が豊かで、日本一の温泉があって、食べ物もうまくて癒しの場所であることを訴える一方で、女性に人気の高いiichiko Barの試飲を行い、好印象を持ってもらうようにしました。中には、おいしいからまた飲ませてと言ってくる女性もいるほど大変好評でした。


待ち時間も楽しめる空間 女性に人気のネイルサービス

【最後に】  

 上記のように、パイが大きくなる一方で、競争も激化しているのが上海の外食市場です。今年の春には、いよいよ大分県の「寿司めいじん」が上海にオープンします。特徴のある味や、ユニークなサービスの提供で中国人に受け入れられることを期待しています。


   

(以上)

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