現在、東日本大震災からの復興に向けて日本では国民が一丸となって取り組んでいますが、中国との関係では、訪日する観光客が激減し、中国側の輸入規制及び風評被害により日本食品の中国への輸出も大きな影響を受けています。こうした状況を打開するため、6月に上海で2つの大きなイベントが行われました。一つは九州知事会などが主催する「中国観光プロモーション」、もう一つは、在上海日本総領事館やジェトロ上海事務所などが主催して行われた「日本観光・食品展」です。今回は日本観光・食品の復活を目指して行われたこれらのイベントについてレポートします。 |
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≪中国観光プロモーション≫
東日本大震災以降、訪日外国人は激減しており、日本政府観光局の調べでは4月は約30万人と、前年同月に比べて60%以上減少しています。中国からの来訪客数も約7万6千人で前の年に比べ大幅に減少しています。また、予定していた大型クルーズ船の寄港がなくなるとともに、航空便を利用した観光ツアーも回復しないなど観光分野に大きな影響が出ています。大分県では、キャンセルされたロイヤルカリビアン社の大型クルーズ船の寄港が8月にチャータークルーズという形で4回別府に寄港することが急遽決まりましたが、大地震以降に大分県を訪れた中国人観光客は数団体という状況です。 こうしたことから、中国における風評被害や不安を払しょくするため、九州地方知事会や九州観光推進機構などが協力して、現地メディア・旅行会社へのプレゼンテーションや、上海市政府への表敬訪問を通じて、震災前と変わらない安心安全で元気な九州をアピールしました。 (メディア・プレゼンテーション) 今回、上海を訪問した九州知事会等のメンバーは、福岡県の小川洋知事を団長に各県副知事(宮崎県の観光局長)で構成されるハイレベル・ミッションとなりました。九州知事会がまとまって海外で活動するのは5月の韓国での観光プロモーションに続き中国が2回目です。プレゼンテーション会場となった上海環球金融中心(上海ヒルズ)29階の会場には、中国や日本のメディア、旅行社など100名以上が詰めかけ、会場はあふれんばかりとなり日本観光への関心の高さを実感しました。 小川知事は、まず震災支援への感謝を述べた上で、「九州は福島原発から1000キロ以上離れており、震災後も放射能の高まりなどは一切検出されていない」と安全を強調。上海との地理的な近さや友好関係に触れ「震災前を上回る観光客をお迎えしたい」と中国人の九州訪問に期待を表しました。このあと、各県の副知事らがそれぞれの観光をPR。大分県の二日市具正副知事は、日本一の温泉の魅力を披露、「大分県の温泉は美容、若返りにも効果がある」として注目を集めました。来賓として上海市旅遊局の道書明局長も出席し、「風評被害を払拭し、日本への旅行商品取り扱いを旅行会社に働きかける」との支援を表明するなど、上海市側の協力的な姿勢も引き出すことができ、効果的なプレゼンテーションとなりました。 プレゼン終了後は、隣接するスペースで九州各県の物産品や観光資源を紹介する特設ブースを設け交流会を行いました。大分県ブースではお菓子の「ざびえる」、「iichiko Bar」などの試飲試食によりたくさんの人だかりができるほど評判がよかったです。 |
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(上海市長への訪問)
一般的に日本の都道府県知事が上海を訪問しても、姉妹都市の大阪府、大阪市、横浜市の首長以外では上海市長に会うことは困難で、副市長に会うのが精一杯の状況です。今回は、福岡県知事に加え九州の各県副知事らが来訪したことから韓正市長への表敬訪問が実現しました。九州が一体となれば大きな力が発揮できることがこうした事象からもわかります。韓正市長は、3月11日発生した大地震に心を痛め、また強い関心をもっていると前置きして、地震発生後に上海市民は原発の影響について不安を感じているが、その不安は理解できる、原発処理においてまだ問題があるのでその点を解決する必要があろうと述べる一方で、九州側と中国側の努力の下で、中国人観光客が激減している状況を緩和することが重要で、自分(韓正)として友好的な措置を講じて観光客が以前の状態に戻るよう努力したいと述べられました。 韓正市長には、李銘俊 上海市外事弁公室主任、道書明 上海市旅遊局長らも同席しており、上海市が九州知事会の訪問を重く見ていることがうかがえました。今回、上海市長に会えた意義はとても大きく、今後、九州がまとまって上海で事業展開していく上で大きな推進力となることが期待されます。 |
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≪日本観光・食品展≫
6月28日、在上海日本総領事館、ジェトロ上海事務所などが主催する「日本観光食品展」がオークラガーデンホテル(花園飯店)で開催されました。日本の豊かな観光資源とともに、安全でおいしい日本食品を中国人に再認識してもらうのが狙いです。オープニングに先立ち記者会見した上海総領事館の泉裕泰総領事は、同館で発給された中国人の訪日観光ビザ件数が4月がゼロだったのに対し、5月は151件、6月は27日までに5259件に上るほど急速に回復していることを発表しました。 このイベントには日本自治体や現地の日本食品会社など約60団体が出展しました。この中には被災地の福島県や宮城県の自治体も参加し、安心安全を訴え観光をPRする姿も見られました。また、愛媛県は大震災後の鮮魚輸出第一弾を記念してクロマグロの解体ショウを実施。来場者にその場で握った鮨が振る舞われ、100人を超す長蛇の列ができるほどの人気でした。愛媛からは週2便の直行便で今後もクロマグロや真ダイなどの高級魚が定期的に直送されるそうです。 |
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(温泉日本一大分県をPR)
大分県は、九州の他の自治体と連携して同じエリアで出展しました。とにかく温泉といえば大分県というイメージを持ってもらうため、ポスターやパンフレット、タペストリー、法被、エコバッグなどすべて温泉づくしでアピールしました。この日、来場した中国人は約2,000名で、大分県や別府市を知っている人は、前回同じ規模のイベントをした時より確実に増えている感じがしました。海山の自然が豊かで、日本一の温泉があって、食べ物もうまくて癒しの場所であることを訴える一方で、女性に人気の高いiichiko Barの試飲を行い、好印象を持ってもらうようにしました。中には、おいしいからまた飲ませてと言ってくる女性もいるほど大変好評でした。 |
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≪おわりに≫
6月に行われた上記のビッグイベントがどれだけ効果があるのかは、今後の訪日観光客の推移や、日本食品輸出再開への動きを見ないと分からない状況ですが、少なくとも、観光については今後、関西エリア、九州への旅行が少しずつ増えていくことが期待できると思います。このタイミングを失することなく、中国に一番近い日本である九州・大分の魅力をあらゆる機会を通じてPRしていこうと思っています。 また、温家宝総理が規制緩和を発表してかなりの時間が経っても何ら前進していない加工品の対中輸出について、現地では人気の大分県産品が欠品する事態が生じています。鮮魚の輸出が可能で、加工品の輸出ができないという異常な状態を、農林水産省はじめとする関係機関は中国側との交渉をスピードアップして早急に改善するよう切に願っています。 |
(以上) |
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