少子高齢化や所得の伸び悩みにより市場が縮小する日本とは対照的に、中国では猛烈な勢いで新中間層が台頭してきています。その先陣を切るのが上海で、週末のショッピングモールはどこも人出でごった返しており、飲食店は多くの若者で賑わっています。「ユニクロ」が世界最大店を上海にオープンしたのもよくわかります。香港系の「citysuper」や、中国資本の「Ole」など輸入品を扱う高級スーパーも激戦地の上海に出店しました。今回は 上海で広がる日本食品市場についてレポートします。 |
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≪相次ぎ高級スーパーがオープン≫ 私が上海に初めて食品の市場調査に来たのは県庁にいた2004年の2月でした。ジェトロ大分の長谷川所長(当時)と一緒に上海市内を回りましたが、久光百貨もまだオープンしておらず、日本産食品を置いていたのは、国営デパートの「友誼商城」とミニスーパーの「しんせん館」、「美濃屋」くらいでした。今では、「ヤオハン」、「久光百貨」、「CITYSHOP」、「カルフール」、「GL-JAPAN」などの百貨店・スーパーに加えてローソン、ファミリーマートなどの日系コンビニでも日本産食品を取り扱うようになっています。2010年、上海ではさらに輸入食品を揃えたオシャレな高級スーパーが相次いで誕生しています。 [citysuper] 香港で最も成功しているスーパーの1つで、香港で8店舗のほか台湾で3店舗展開しています。上海では、高層ビルが立ち並ぶ上海の国際金融センター地区に新しくできたスーパーブランドモールifcビルの地下2階に今年6月にオープンしました。香港のcitysuperと同じ高級感のあるお店となっており、店舗面積は約2,700㎡で輸入食材やワインを豊富に揃え、「ロイズチョコレート」、「リトルマーメイド」といった日本で人気のスイーツ、ベーカリーショップも入っています。ここでは、富士甚醤油の調味料、菊家のスィーツ、八鹿酒造、三和酒類の焼酎やリキュールなどの大分県商品が販売されています。ビジネス街で、地下鉄と直結した高級ブランドモールの中にありますが、生活感のない場所で食品を買い求める客がどのくらいいるのかが気になるところです。 |
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[ole]
中国最大規模の小売業者の「華潤万家」が展開する高級スーパー「Ole」は、これまで北京を中心に深圳、杭州、寧波、香港に計13店舗を出店。上海1号店は、若者が多くトレンディな街、日本でいえば渋谷と似ている徐家匯の港匯広場にオープンしました。店舗面積は約4,000㎡で、開放感があり贅沢にスペースをとったオシャレな店舗はとても中国資本のスーパーとは思えません。「Ole」のコンセプトは“フードホール”。世界各国の食材を揃え、国際都市の生活を体験できるスーパーとなっており、日本からは、北海道や沖縄の海産物、青森のりんごなどが販売されています。中国ではまだ解禁されていない日本のみかんやメロンも一部おかれていて驚きましたが、国営だけにかなりの力をもったスーパーであることは間違いなさそうです。大分県関係では、JAフーズおおいたの果物ジュースと菊家のスィーツが置かれていました。徐家匯地区は20代~30代の若者が多いだけに高級な輸入商品がどれだけ売れるか未知数なところがありますが、新中間層をターゲットに大分県では2011年1月中旬に「Ole」で県産品プロモーションを計画しています。 |
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[百食品城]
人民広場近くにある老舗国営デパート上海第一百貨店にはもともと食品売り場はありませんでしたが、同百貨店の新館リニューアルにともない、地下一階にフードタウン「百食品城」が7月にオープンしました。フードタウンの約半分を占めるスーパーマーケットは日本の冷凍食品やお菓子が充実。また、長崎県産の鮮魚や、日本と同じようにカットされたお肉もあります。スィーツは「ビアードパパ」、「MOCHI CREAM」のほかケーキやゼリーなどちょこまかしたものまで充実しています。ここには熊本県の杉養蜂園が出店しておりハチミツ飲料を熊本から輸入して販売しています。果物コーナーは大分県の日田梨を輸入している上海钊欣貿易がテナントとして入っているので、9月後半には日田の新高梨が棚に並ぶ予定です。 |
[五番街] 「Ole」から徒歩5分、ショッピングモール・メトロシティー地下1階に日本発のお店が並ぶ「五番街」が8月オープンしました。ベーカリーの「ドンク」、「ビアードパパ」、抹茶カフェ「七叶和茶」、「ドラッグストアセガミ」、生家の「日比谷花壇」、雑貨の「Frangfrang」、「無印良品」、メガネの「Zoff」などが軒を連ね、まさに上海の日本ストリートと言っても過言ではありません。ここでの一番人気は「七叶和茶」という和カフェです。抹茶をはじめ、抹茶ラテ、白玉小豆抹茶ラテなどの抹茶飲料のほか、カレーやスパゲティなど食事もできるようになっています。金色と茶色の2色で統一され落ち着いた内装デザインとテーブルごとの間仕切り空間により、リラックスしておしゃべりができるところが若者に受けているようで平日でも20分待ち、週末ともなればいつも長蛇の列ができています。5番街は地下鉄駅とも直結していることから、いつも人の流れが多く、上海にお店を出そうと考えている方は是非、見学してもらいたい場所です。
≪大分県企業の状況≫ このように上海エリアの経済発展に伴って日本産食品の売り場は着実に増えています。2011年にはGMSのイズミが海外1号店を蘇州に、2012年には百貨店の高島屋が上海に オープンします。ただ、これまでのところ、こうしたデパ地下や高級スーパーで販売されている日本商品の99%以上がいわゆるナショナルブランドの商品で、地方の特産品的なものは数えるほどしかない状況です。N/B商品と比べて知名度がなく、価格も高い地域商品は苦戦を強いられていますが、こうした中でも、焼酎、リキュール、ミネラルウォ-ター、調味料、果物ジュース、梨などの大分県産商品が定番商品となっています。これら商品は商品自体の魅力はもちろんですが、必ず上海(中国)に多くの販路を持っている有力輸入卸業者とパートナーを組んでいます。また、今後は輸出だけにこだわらず、上海に会社を作ってお店を出すこともありだと思います。日本産食品が普及しないネックとなっている輸入規制や輸送・通関コストによる価格上昇からも解放されます。佐賀県のアイスクリームの店、福岡のお菓子の店、中津の唐揚店など、九州内でもその動きが出てきています。中国に進出して、日本(地方企業)の技術と現地のリソースでつくった商品を新中間層向けに売って行く時期に来ているかもしれません。 (以上) |
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