大分県と上海市は30年近い交流の実績を基に2008年に友好交流協定を締結し、更なる人的交流、経済交流を推進しています。自治体トップによる交流も緊密になり、広瀬知事は一昨年12月に続き、本年1月にも上海を訪問しました。今後の成長戦略を描くためには、巡航速度で経済発展を続ける中国の成長をいかに大分県や大分県企業の発展に取り込んで行くのかが課題となっています。広瀬知事は石川県との合同物産展の開幕式に出席したほか、上海市政府要人との会見、万博会場視察、上海大分県人会との交流会など積極的に動いて上海市と大分県の絆を深めました。今回はこうした知事の上海訪問を巡る動きについてレポートします。 ≪石川・大分合同フェア≫ 大分県は毎年中国で物産フェアを開催していますが、縁あって、この2年間は上海を中心に高級スーパーを展開するCITYSHOPと組んで実施しています。今回は1月22日~31日の10日間、中国の消費者の購買意欲が高まる春節前に、同じタイミングでフェアを計画していた石川県と合同で開催しました。大分県からは、牛乳、豆乳、とり天調味液、乾椎茸、海苔、焼酎など15社が約50品目を出展しました。日本からの輸入商品は、物流費、関税、値増税などのコストが上乗せされるため商品価格が日本の1.5倍~2倍になるので、「安心、安全」なものでも、何か特徴がある商品でないとなかなか受け入れてもらえません。こうした中で、特に好評だったのが九州乳業のLL牛乳(くじゅう高原牛乳:1ℓ)でした。価格は1本29.8元(約400円)と決して安くはないのですが、「甘くておいしい」と試飲した人はかなりの割合で購入していました。中国語と英語で「くじゅう牛乳」の特徴や「衛生的な工場」を説明したパンフレットを用意して消費者に訴求したこともあって、輸入した50ケース(300本)は1週間もしないうちに売り切れました。この結果を受けて、九州乳業とCITYSHOPとの間で現在、定番化に向けた商談が進められています。中国ではメラミン混入事件の影響で中国産乳製品に対する消費者の信頼が低下しており、牛乳の輸入量は年々増加している状況です。所得の向上により食生活の欧米化が進み、中国では牛乳の消費量は増えると予想されていますので今後の販売拡大が期待できます。 |
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また、今回はじめて乾椎茸の輸出にチャレンジしました。これまで香港には輸出実績があった乾椎茸ですが、中国本土へはまだ輸出したことがありませんでした。中国の輸入規制上、農産品はりんご、なし、米、魚類しか認められてないことや、中国は椎茸の本場で価格もべらぼうに安いので商売にならないと考えられてきたからです。ところが、昨年8月にCITYSHOPの崔軼雄社長が大分県に商談で来た際に、お土産を買いたいというのでトキハ本店地下2階の「ふるさとコーナー」に連れて行ったところ、きれいにパックされた乾椎茸を10万円分購入して帰って、中国人にとても好評だったことがわかりました。その後、検疫当局に乾椎茸が輸入規制対象ではないことを確認し、日本の農林水産省が発行する植物検疫証明書を取得して中国への輸入が実現しました。フェアでは、乾椎茸を水で戻してバター焼にして焼いたり、鶏と一緒に煮てスープにしたりして試食を行いながら販売しました。1袋110元(約1,500円 70g)と中国産椎茸の5倍以上する乾椎茸となりましたが、原木栽培の特徴などを訴えた結果、「花どんこ」についてはまずまずの売れ行きとなりました。今回の結果を基に大分県産乾椎茸の販売戦略を考え、「麦焼酎」、「梨」に続き大分県の顔となる商品を一つでも多く中国市場に根付かせたいと思っています。 ≪上海市人民政府訪問≫ 上海市は直轄市で人口約2,000万人。2008年の一人あたりGDPは1万ドルを超え、中国No1の経済力を誇る都市です。よって、上海市のトップは他の省や直轄市以上のランク付けがされており、党書記や市長へのアクセスはかなり難しくなっています。日本の地方自治体の首長が、上海市政府を表敬訪問する場合に上海市長に会えるのは、通常、姉妹都市の大阪府、大阪市、横浜市のみとなっています。国家レベルの賓客が多いため、こうした姉妹都市を結んでいる都市の首長でもなかなか市長への表敬訪問は難しいと言われています。年に一度、在上海日本総領事館が行う最大行事の天皇誕生日レセプションでさえ、上海市政府からの来賓は副市長ということからも、上海市幹部へのアクセスの難しさがわかります。日本の知事でも、副市長に会えなかったという例をよく耳にします。今回、お会いできたのは上海市の外事交流担当の唐登傑副市長で、前回2008年12月にも広瀬知事が表敬訪問した相手です。唐副市長は「広瀬知事にお会いするのを楽しみにしていました」と声をかけ、一通り挨拶を交換したあと、上海市の経済状況や万博の準備状況について自信を持って説明していました。知事からの経済発展の秘訣等の質問に、副市長から継続的な大型投資の政策の話があり、30分の予定時間を15分程度オーバーするほど熱の入った会見となりました。 |
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≪上海万博会場視察≫ 上海市では5月1日~10月31日まで上海万博が開催されます。過去最高となる242の国と国際機関が出展するこの万博は、開催面積で愛知万博の4倍、来場客数では過去最高となる7,000万人を予定しており、史上最大の万博となります。広瀬知事が上海世博覧事務局を訪れた1月22日は上海万博までちょうど100日という日でした。上海世博局の張蘊傑局長特別補佐によれば、4月15日までにすべての展示物の搬入を終える予定で、胡錦涛主席からは、①各パビリオンの建設と展示が予定期間に竣工することを確保する、②運営とサービスについて全面的な準備ができることを確保する、③セキュリティーに万全の準備ができることを確保する、④良いマナーと調和のとれた社会雰囲気を確保する、などの「6つの確保」について指示が出たと説明がありました。愛知万博を統括した経験のある広瀬知事からは、夏の暑さ対策など万博の苦労話が披露され、準備万端でもいざ万博が始まって実際に起こるトラブルにどう対応するかが重要だとアドバイスがありました。このあとジェトロ本部展示事業部の花田美香主幹から、九州・沖縄ウィーク(9月29日~10月6日)の会場となる日本館イベントスペースの案内をしていただき、大分県が予定している「大分おどり隊」のイメージをつかむことができました。 |
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≪上海大分県人会新年会≫ 上海には上海大分県人会があり、現在の会員数は約70名で概ね2ケ月に1回懇親会を開催しています。1月22日には広瀬知事を迎えて大分県人会の新年会を開催しました。県人会員に加えてCITYSHOPでの物産フェアに出展する県内企業関係者や県職員を合わせ約60名が参加。濱矢会長の挨拶のあと、2009年の活動報告や2010年の活動計画が承認されました。次に、広瀬知事から、大分県が留学生数の人口比で東京を抜いて1位になったことや、上海万博の九州・沖縄ウィークで「大分おどり隊」を派遣するとのお話がありました。懇談のあと、上海で頑張っているAPU(立命館アジア・太平洋大学)など県内大学OB・OGからのスピーチでは、「大分弁」も飛び出すなど大変盛り上がりました。また、APU卒業生の組織である上海校友会の呉継煥会長から今後、県人会と協力して大分県を盛り上げようとエールが送られ、県人会もこれに応じて、2月のAPU校友会新年会に県人会も参加することになりました。アトラクションとして用意した四川省の伝統芸能である「变脸」も新年会に花を添え、年頭に相応しい新年会となりました。 |
≪魯迅記念館視察≫
(了) |
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