日中経済協会上海事務所 大分県経済交流室 駐在員レポート
史上最大の万博開幕まであと1年
  ジェトロ上海センター
大分経済交流部 山崎吉明

  中国では、来年2010年に上海万博が開催されます。日本では東京オリンピックが1964年に開催され、その6年後の1970年に大阪万博が開催されました、上海万博は北京オリンピックの2年後の開催となり、中国の急速な発展を象徴していると言えます。かつて日本ではオリンピックと万博を境に、都市化が進み人々の生活が豊かになりました。上海万博は、中国が抱える環境問題や格差問題を解決し、調和のとれた質の高い都市を建設していく大きなチャンスとなっています。今回は開催まで1年となった上海万博の進捗状況をレポートします。



街でみかけるマスコットの海宝(ハイバオ) 浦東空港に設置されたPRスクリーン

≪上海万博の概要≫

  上海万博は来年5月から10月まで半年間開催され、総事業費は約290億元(約4,200億円)、参加国の目標は200の国・国際機関でしたが、既に230以上の出展が決まっています。入場者数はこれまで最高の大阪万博の6,400万人を超える万博史上最大の7,000万人を目標としています。95%が中国人来場者、5%が外国人来場者で、日本からは100万人程度を見込んでいます。万博会場は上海中心部を流れる黄浦江の両岸で、盧浦大橋と南浦大橋の間に挟まれたエリアになります。会場の総面積は328ヘクタール(愛知万博の約2倍)で緑地や広場が全体の49%を占めるなど環境にも配慮されています。万博開催まで一年をきり、会場では急ピッチで建設工事が進められています。万博会場を視察した今年4月中旬時点では、中国館、テーマ館、万博センター、万博演芸センターなどの主体構造部分の工事が行われていました。開幕に間に合うのか心配なところもありますが、突貫工事をしても仕上げるところが中国のたくましさです。現在、会場建設にあたる労働者は約1万人ですが、ピーク時には3万人まで増えると言われています。



万博会場全体図  進む会場整備
国家館では最大の中国館  18,000席を有する万博演芸センター

≪インフラの進展≫

  7,000万人もの人が来場するとなれば、空港、駅等から万博会場までの輸送や、黄浦江で隔てられた浦東会場と浦西会場をつなぐ交通手段が確保されなければなりません。このため上海市内のいたるところで道路工事や地下鉄工事が行われています。現在、浦東地区と浦西地区は7本の橋と5本のトンネルで結ばれていますが、2010年までにさらに4本の橋と8本のトンネルが新設予定です。来場者の半数が利用すると言われる地下鉄は会場周辺に5路線を開通させ(3路線は開通済)、会場付近に10の駅を設置する予定です。空港関係では、浦東空港が昨年4月に第2ターミナルを運営開始。虹橋空港の第2ターミナルと第2滑走路の工事は09年末竣工予定で、これにより空港処理能力は2010年までに8,400万人になります。また、1日当たり44万人と予想される宿泊者に対応するため、ホテル建設が進んでおり、開幕時には市内の星付きホテルは500以上、一般旅館は4,000以上となる見込みです。



≪上海万博の特徴≫

  上海万博のテーマは中国語では「城市,让生活更美好」となっており、英語では「Better City, Better Life」、日本語では「より良い都市、より良い生活」と訳されています。これまでの万博は主に「科学技術」、「自然」、「環境」などがテーマでしたが、上海万博は初めて「都市」そのものをテーマにしています。これを象徴するベストシティ実践区は、世界から代表的な都市を集め、都市生活向上のための実践プランと実物を展示するものです。日本からは、大阪府・大阪市が共同で「環境先進都市、水の都大阪の挑戦」というテーマで出展することになっています。また、上海万博の目玉の一つがオンライン万博です。会場に来られない人がネット上で各パビリオンの内容を楽しむことができ、実際に会場を訪れる人も事前に各パビリオンの様子がわかるので、効率的に会場を回ることができます。Webサイトは既に今年5月1日から部分的にオープンしており、来年5月1日の開幕に合わせ全面オープンします。



≪日本館≫

  上海万博が史上最大の万博であることや、日本に近い中国で行われることで、日本政府は日本館の充実に力を入れています。今年2月27日に行われた日本館起工式には福田康夫前総理が出席しました。民間企業の協力も合わせ、過去の万博を上回るいいものを官民一体でつくろうという方針で、3階建、延床面積は約7,200平米、過去の海外で開催された万博の日本館としては最大規模となっています。総費用は130億円の半分を政府予算、半分を企業からの協賛金でまかなう計画です。テーマは「こころの和、わざの和」として、環境問題などを解決していく技術やこころのつながりを素材とした展示を行います。また、日本館にはイベントステージがあり、会期中を通じて様々なイベントを行う計画で、九州の各自治体もこのスペースで観光PRイベントを行う予定です。



日本館イメージ(愛称:紫蚕島)提供ジェトロ

《マナーアップ運動》

  上海では車の運転は荒く、歩行者も赤信号でも渡るなど交通マナーの悪さは有名です。地下鉄では降りる人と乗る人が交錯したり、街ではタバコやゴミのポイ捨てもよく見かけます。近代的なビルが立ち並び、高級車や高級ファッションが目立つ上海ですが、経済発展に市民の意識やマナーが追いついていないのが実情です。上海万博を迎えるにあたり、こうした市民のマナーを改善する運動も展開されています。上海市は「上海を愛すなら自分から行動を」と今年4月から来年の4月まで、毎月5日、15日、25日を、それぞれ「窓口サービスの日」、「環境清潔の日」、「公共秩序の日」とし、集中的に啓発イベント行っています。4月25日には、300名のボランティアたちが約40の地下鉄駅で、市民に「左行右立、文明乗梯」(エスカレーターでは、左をあけて右に立つ)と宣伝していました。上海万博の開催により市民の意識、マナーが変われば、上海はさらにグレードアップした国際都市になることでしょう。



マナーアップを啓発する看板 新環境衛生条例の発布キャンペーン

《最後に》

  上海万博は、上海市の新たな発展のスタートになるばかりではなく、中国全体の経済発展にも大きな影響を与えます。万博は半年もの長い期間開催されます。この間、中国の内陸を含む各地方から可処分所得を増加させた7千万人近い人々が上海に押し寄せ、最新の製品や技術などに触れることになります。こうした万博の感動を持ち帰った人々の行動が消費大国になる上で大きな役割を果たすと期待されています。

 

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