日中経済協会上海事務所 大分県経済交流室 駐在員レポート

世界不況最後の砦 中国 
~ 多様化する巨大市場へのアプローチ ~

         世界同時不況の荒波の中で消費市場が着実に広がっている市場が中国です。経済成長とともに、人口13億人の旺盛な購買慾にますます拍車がかかる中国では、世界各国の企業が巨大マーケットにいち早く喰い込もうと、しのぎを削る競争が繰り広げられています。中国市場の覇権を巡る群雄割拠の中、「メイド・イン・ジャパン」の商品を中国市場へ売り込む中小企業を後押しするビジネスモデルが出てきています。

【伸びる消費市場】
アメリカを発震源とする金融危機の影響で日本をはじめ世界中の国々の経済が悪化しています。中国でも中小の輸出企業が多い広東省や浙江省などで多くの企業倒産が出ており、10%以上のハイペースで伸びてきた経済成長のペースにややブレーキがかかっている状況です。ただ、先進諸国に比べると金融危機の傷は浅く、中央政府や地方政府の巨額の財政出動や、圧倒的な国土の広さと人口を背景とした内需拡大策により、中国は今や世界経済の景気を下支えする最後の砦としての役割と成長を期待されているといえます。
直近の国家統計局の発表によると、国内消費を示す中国社会消費品小売総額は約20%増で推移しており、今後、収入の上昇につれて中国の消費は引き続き伸びることは明らかです。世界同時不況の影響で落ち込んでいる消費者マインドを刺激しようと上海のデパートではいつも年末から始まるセールを前倒しして行っています。週末はどのデパートに行っても多くの買い物客で賑わっていて、世界不況どこ吹く風といった感があります。上海第一八佰伴(ヤオハン) では、12月31日朝8時から翌朝2時までの営業で、中国全土単店舗単日の最高記録2.58億元(約38億円)を売り上げました。この数字は前年比21%アップだそうです。こうした有望な中国市場へ、「メイド・イン・ジャパン」を売り込む日本企業をサポートする取り組みが始まりました。

正大広場のリスマスセール 年末の上海八百伴デパ地下

【IT企業アリババの輸出支援サービス】
「世の中から難しい仕事をなくしたい」世界No1のe-コマースカンパニーであるアリババグループ会長のジャック・マー氏(中国杭州市出身)は、言語や通関、法律の問題など難しいイメージが先行する日中間貿易を誰でもできるよう簡単に行う方法はないかと、ソフトバンクと協働して「中国向け輸出支援サービス」を今年から開始します。世界最大のB2B(企業間電子商取引)市場であるアリババ・ドット・コムと、アジア最大のC2C(一般消費者同士の取引)及びB2C(企業と一般消費者の取引)である傘下のタオバオ・ドット・コムのネットワークを活用し、販売先を求める日本側の売り手と、新たな仕入先を探る中国の買い手をマッチングさせ、交渉や決済、物流などを総合的に支援するものです。これらのサービスはすべて、アリババグループとソフトバンクの合弁会社であるアリババJAPANが開設する新しいウェブサイト上で行われ、言葉も翻訳されるため中小企業や個人のレベルでもアクセスが可能となります。当面は、アリババグループの中国サイトに「Made in Japan」コーナーを設けて都道府県が推薦する特産品などを半年間は無料で掲載する予定になっています。

アリババ・ドット・コム タオバオ・ドット・コム

【日本プレミアムフード店 GL-JAPAN PLAZA】
「上海の巨大マーケットで日本各地の優れた物産を継続的にアピールする場を提供したい」と広島に本社を置く㈱グローカルジャパンは、上海の富裕層と欧米人が集い、上品な雰囲気が漂う「新天地」に隣接する高級マンションの地下1階に、売り場面積2,585㎡(久光百貨店のスーパーマーケット部分に匹敵)のプレミアムフード店を今春にオープンさせます。デパ地下さながらの売り場は、①日本各地の物産品を自治体別にブース展開するエリア、②希望自治体による1週間~10日間規模の物産フェアを行うエリア、③生鮮3品(肉・魚・野菜)を中心に豊富な食材を取り揃えるエリア、④パンやスイーツ、お惣菜、日本茶等のバラエティー豊かなテナントが入居するエリア、の4つのエリアに分かれており、ほかでは買えないモノがここでなら買えるといったプレミアム感を持たせる品揃えを予定。日本の地方産品は“よく分からないのに高い”といった課題があるため、ここではただモノを置いておくだけではなくて“売る”ところまでフォローを行います。

GL-JIAPANが入居する「華府天地」 すぐ近くにある「新天地」

【マーケティングショップ sampleplaza】
 「自社製品を中国市場へ売り込みたい」、「自社商品が市場にマッチしているかを確かめたい」という企業にマーケティングリサーチの場を提供するのが北海道に本社を置くY’s・JAPAN㈱が運営するsampleplazaです。レストランやカフェバー、ショップなどがたくさんあり、トレンドに敏感な若者たちや富裕層が多くあつまる上海市衡山路に昨年7月にオープンしました。現在、大塚製薬、明治製菓などのナショナルブランド企業から茨城県のラーメン会社まで42社が出展しています。出展業者は商品サンプルを100~2000個(モノによる)用意し、1ターム2週間で棚(H375mm×W600mm×D450mm)3段に陳列します。一方、消費者側として会員登録している人が約8,000人(95%が中国人)で、年会費100元を払えば誰でも会員になれます。各商品にはそれぞれポイントが付いてあり(例えばチョコレート2ポイント、ラーメン3ポイントなど)、1日5ポイント分まで無料でサンプル商品がもらえます。もちろんサンプルをもらった各商品については、次回来店の際に店内に設置されたパソコン上で出展企業側が作成したアンケート(10項目まで)に答える必要があり、このアンケートに答えないと次からサンプルがもらえない仕組みになっています。展示期間終了後には、アンケート集計票が出展企業側にオンラインで報告され、企業はそれを今後の戦略に活用することができます。まだ中国で販売されていない商品(ハンドキャリー商品)も出展が可能です。

サンプル商品(ポカリスエット等) 店内に設置されたアンケート入力端末

その他、①オフィス用品のKOKUYOが行う、カタログ通販を利用したテスト販売や、②郵政事業株式会社が行う、販売・決済・国際輸送を一体化して日本商品を届けるオンラインショッピングJapaNavi、③ヤマト運輸が行う、輸出入手続きから企画・販売までをトータルにサポートするヤマトマーケティングギャラリー、④銀聯カードの決済システムを活用した日本企業約100社による中国向けネット通販「バイジェイドットコム」、など、中国市場開拓をサポートする様々な取り組みが行われています。大分県も今年2月に上海市の高級スーパーCITY SHOP 4店舗で大分県フェアを開催予定です。中国市場へのアプローチの選択肢は確実に増えていますので御社の中国戦略に是非ご活用ください。

(了)
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