中国で活躍する大分県企業(2) |
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~ ジョイフル 中国外食市場への挑戦 ~ 大分県上海事務所長 山﨑吉明
中国全体の外食産業の売上高は90年代から毎年2ケタ成長を続け、2006年には前年比16%増の1兆345億元となっています。経済成長に伴う中国人の所得上昇とライフスタイルの変化により、今後も外食産業は急拡大していくことが予想されています。こうした中、5月18日にJoyfullの中国1号店が上海市の徐家汇にオープンしました。今回は、中国を有望な消費市場と捉え外食産業としては県内企業では初の中国進出となるジョイフルの取り組みを紹介します。
《なぜ中国か》 ジョイフルは現在、日本で700店舗余りのチェーン展開を行っており、売上高では業界3位となっています。上海巧艺府餐饮有限公司(上海ジョイフル)の山本利明社長は、現在の中国の経済発展状況や将来性から考えると、13億人の市場はとても魅力的で、しかも地理的にも文化的にも日本に近いという点で中国進出を決めたそうです。 《大都市中心部へ出店》 日本であれば郊外のレストランのイメージが強いJoyfullですが、中国では大都市中心部への出店となっています。徐家汇は上海で最も大きいショッピングエリアの一つで、日本で例えるなら東京の渋谷です。交通の便もよく、非常に多くの人で賑わっているところです。世界一の売上げのあるKFCほか、マクドナルド、ピザハット、味千ラーメン、サイゼリアなどライバルの外食店も数多く出店しています。
山本社長によれば、第1号店はJoyfullのフラッグショップとして位置づけており、できるだけ多くの中国人にJoyfullを知っていただきたい、Joyfullブランドをしっかり発信していきたいということで大都市中心部への出店となりました。 《ターゲットはホワイトカラーの中国人》 中国では大卒の初任給が約3,000元(約45,000円)ですが、ターゲットは月収4,000元以上のホワイトカラーです。オープン後1ケ月間の客層は、中国人が7割、日本人2割、欧米その他が1割、7対3で女性が多く、年齢は20代~30代が中心とのことです。流行を作るという意味で女性に人気があることは重要で、清潔でおしゃれな店内とポップな雰囲気が女性に好まれているようです。また、中国では珍しいドリンクバーがあって、イタリアン、和食、エスニック料理など多国籍の料理が比較的安い値段で食べられるところも大きな魅力となっています。価格は安いもので5元、高いもので45元程度、平均客単価は約35元となっており、山本社長は、より多くの方に来てもらうためもう少し価格を下げていきたい意向です。
中国人のお客さんは、友達同士やカップルで来る場合が多くサラダやポテト、羊の串焼きなど小物料理を何品か頼んで皆でシェアして食べるようです。日本ではハンバーグが圧倒的な人気メニュですが、中国では健康志向からかチキンステーキが大人気だそうです。 《どこにも負けないサービス》 中国のお店やレストランで、従業員のマナーが悪く、笑顔がないと感じた方は少なくないと思います。先日、大分国体の総合プロデユーサー塩屋俊監督に同行して来られた方も、 数万円の買い物をしたのに笑顔も何もないと憤慨していました。近代的なビルが林立し、日本よりもIT社会になっている上海市ですら、『お客様』という意識はごく一部を除いてまだまだ育っていない状況です。逆に考えれば、礼儀作法をわきまえた笑顔のあるサービスができれば他店にない“売り”になるのです。 Joyfullでは、サービスの核となる10人の中国人スタッフを大分の本社や東京のディズニーランド、有名ホテル等で研修したあと、客にとって中国のサービスと日本のサービスのどちらが気持ちいいかを考えさせ、スタッフが自分たちで考えた接客マニュアルを作成しました。決して慇懃無礼となることなく、きちっとした礼儀作法に裏づけされたフレンドリーなサービスをスタッフが心がけるようになりました。この点は中国のお客さんに非常に受け入れられていると言えます。実際に35元の客単価でこのレベルの接客サービスを提供しているのはJoyfullだけだと思います。また、一般的に中国ではお店の清掃業務は業者に委託していますが、Joufullではお店を大切にし、自ら清潔な環境を作るという意味でスタッフが清掃していることも人材育成につながっているようです。 《今後の展開》
8月末には上海2号店がオープン予定です。1号店が繁華街への出店だったのに対して、2号店は住宅街のショッピングモール内(大分で例えれば明野アクロス内)の出店です。 山本社長は1号店ではできなかったことを2号店でやってみたいと意気込んでいました。当面は上海市内で4,5店舗出店して、その後は蘇州、無錫、杭州など上海周辺エリアへ出店していく方針です。 中国の外食市場はとても大きな市場で将来性もある市場ゆえに、競争も激化しています。 この中で生き残っていくためには、社会情勢やライフスタイルの変化を的確に捉えて、「安心」、「安全」、「健康」といった日本企業の得意分野を活かしながら、中国の食文化に「新しさ」、「楽しさ」、「便利さ」といったJoyfullの新風を吹き込むことが大切です。中国の地においてもJoyfullブランドが育っていくことを期待しています。 |
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