また、この事件の影響を受けて乳製品の販売が落ち込んだことや、一部の乳製品メーカーが、特定地域からの牛乳買入れを停止したため、河北省、山東省、内蒙古自治区などの地方政府は乳牛農家のための保護策を実施しました。河北省では牛1頭に200元(約3,000円)の補助金を乳牛農家に交付しました。内蒙古自治区政府は1億元を拠出して大手乳製品メーカーの「伊利」と「蒙乳」両者への牛乳供給を確保しています。さらに中国政府も内蒙古、河北、遼寧、山西、山東、河南の6省・自治区にある生活難に陥った酪農家に対して3億元の支援策を実施することを決めています。
(乳製品に対する市場の反応)
粉ミルク問題が発覚してから、カルフールやウォルマートなど大型スーパーでは三鹿など中国製粉ミルクを撤去する動きが見られました。日系のスーパーでは中国製の牛乳、ヨーグルトなど乳製品も全部を撤去するところもありました。上海市の久光百貨では、事件が発覚してしばらくは日本製の明治の粉ミルクが1日に100缶のペースで売れたといいます。上海の港は外国からの粉ミルクの輸入が大幅に増えたため、通関にものすごく時間がかかるようになったという話も出るほど外国産粉ミルクに対する需要が高まっています。実際に大手量販店の粉ミルク売り場では、日本、ドイツ、オーストラリア、オランダ、シンガポールなどからの輸入粉ミルクが大半を占めていました。
また、牛乳、ヨーグルトなどのについては、政府による安全宣言が出されたあと、大手スーパーの乳製品コーナーではメラミン検査の結果を説明した大きな立看が据付けられたり、商品自体にメラミン検査済みシールを張ったりして、消費者の不安を和らげる取り組みがなされています。ウォルマートでは、「店で販売している乳製品はすべて、国の検査に加えて民間検査機関の検査も受けて2重にチェックしているので安心」というポップを掲げていました。大手量販店では牛乳、ヨーグルトなどの乳製品は、ほとんどが中国産の商品で占められています。上海の日系スーパーの中にも安全宣言を受けて再び中国製牛乳を置くお店も出ました。ただ、安全宣言が出されたあとも中国産牛乳に対する不安が拭いきれないのか、日本人、欧米人や中国人富裕層の多くは、高くても輸入牛乳や後述する日本の技術を使った牛乳を買う傾向にあるようです。
上海での牛乳価格の比較(1リットル) |
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上海での粉ミルク価格の比較 |
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(1元は約15円) |
明治(輸入・チルド) |
42~43元 |
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明治(輸入) |
199~225元 |
北海道牛乳(輸入・LL) |
38元 |
能力多(輸入・豪州) |
298元 |
光明(中国産・高品質) |
13~19元 |
恵氏 (輸入・シンガポール) |
189~229元 |
朝日(中国産・日本技術) |
23元 |
雅士利(中国産) |
158元 |
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