日中経済協会上海事務所 大分県経済交流室 駐在員レポート

中国で活躍する大分県企業(1)

     中国に進出している日系企業は約2万社、華東地区で約4千社にものぼるといわれていますが、大分県から進出している企業はあまり多くありません。大分県は工業生産額や対中貿易量は九州でも上位にあり、県内立地企業の多くが中国にも展開していますが、これら大手は東京等大都市に本社があるため、大分県企業の進出というときわめて少ないのです。そうした中、中国で頑張っている大分系企業を紹介していきたいと思います。

新山村(蘇州)塑料包装材料有限公司 
     江蘇省蘇州市呉中経済開発区に立地する新山村(蘇州)塑料包装材料有限公司(山村政見社長=大分市出身)は、包装材料のエアーキャップ(「ぷちぷち」といえばわかると思います)、ポリ袋、EPE(ミラーマット)を主力商品として生産し、蘇州周辺の日系企業等に納めています。工場設立は1995年と大変早く、現在の新工場へは06年の3月に移転しました。

<先代が82歳で創業>
     本社は大分市で発泡スチロールやダンボールを製造する山村産業株式会社。先代創業者の山村君子さんは、「これからは中国だ」と1995年に単身中国に乗り込んで会社を起こしました。このとき実に82歳。最初に発泡スチロールの合弁企業を、次いで水耕栽培のミニトマト(中国初)の会社を立ち上げましたが、この2社は失敗し、現在の会社は3社目になります。3つ目の会社も創業当時は、中国では緩衝材が珍しく、需要がほとんどありませんでした。しかし、辛抱を重ねた結果、日系企業などの進出に伴い顧客の開拓も進み、現在は黒字経営を実現しています。
経営が軌道に乗り始めたころ、先代の君子社長が病に倒れ、急遽、子息の山村政見さんが後を継ぎ、現在にいたっています。最初5人で始めた会社が現在45人の従業員をかかえるまでになりました。

<品質の高さと納期の厳守で勝負>
     中国でも緩衝材、ポリ袋の需要が増え、同業他社が増えてきて、現在激しい競争にさらされています。特に、新山村の製品はバージン原料を使用するため、再生原料のものに価格では負けてしまいます。しかし、品質のグレードの高さ、納期の厳守といった面で顧客の信頼を得ています。電子部品や精密機械などすべてニーズにあわせた注文生産で、現在の取引企業は日系が6割、中国系が4割です。

<家族的なスタッフ>
     会社を切り盛りするスタッフは、日本人では山村社長と、蘇州大学に留学し昨年経営に加わった娘の葉子さんの2名。そして、創業間もない頃からのスタッフである黄文芸、孫際蓮さん夫妻。黄さんは湖北省荊州市の出身、農業研修生として友好都市である三重町(現豊後大野市)に行ったのが先代社長と出会うきっかけとなりました。中国語のできない先代社長と寝食をともにして支えてきました。

<今後の課題>
     原油高騰による原料の値上がり、従業員の賃金水準も年々上がっており、コスト増が悩みの種です。今後はコストを抑えながらも、品質の高さで勝負し、半導体向けをねらった無菌の新製品、環境面ではリサイクルできる製品づくりなどの課題があります。
もうひとつの悩みは、10,000㎡ある新工場の敷地のうち、工場としてまだ半分しか使っていないこと。「もったいないので、どこか使う企業がないですか。」と山村社長。

上海大鶴蛋品有限公司
     上海浦東空港からほど近い南匯区鹿園工業園区に立地する上海大鶴蛋品有限公司(大嶋正顕会長)は大分県日出町の有限会社エビアンの独資企業で、上海在住日本人に人気のある卵「蘭王」を生産しています。

<鶏卵の生食文化を中国に>
     中国では生卵を食べるという文化がありません。必ず火を通さないと安心できないからです。上海に住む日本人が、すき焼き、たまごかけなど生卵は食べたいけれど食べられない、そんなニーズに答えるべく登場したのがサルモネラフリーの「蘭王」です。
きっかけは、牛肉、卵を取り扱う上海百蘭王発展有限公司の現取締役が、神戸に暮らしていたとき購入していた「蘭王」にほれ込み、上海への進出をもちかけたことから。大嶋会長はその要望に答え、2006年3月に上海に独資企業を立ち上げ、日本から卵の検査、洗浄、選別の機械を導入、委託農家に飼料を供給して引取る方式で卵の生産を始めました。「嶋」の字が中国にないので、会社の名前は「大鶴」になってしまったそうです。
上海の高級スーパーなどで10個25元と普通の卵の5~10倍もする値段にもかかわらず、安心、おいしいという評判で人気商品になりました。

<商標問題に発展>
     07年3月、販売会社の上海百蘭王から、取引停止が急に言い渡され、やむを得ず直販を始め、市場に2つの「蘭王」が流通することになりました。ところが、百蘭王側が先に商標登録を申請しており、「蘭王」商標をめぐる本家争い問題に発展しました。上海市の消費者の間でも、2つの会社が同じ銘柄で出しているので、どっちがニセモノだという風評が飛び交いました。中国の商標登録は先願主義なので、大嶋会長は苦しい立場に立たされましたが、日本での商標や実績を示して係争しているところです。

<日本、中国、フィリピンを行ったりきたり>
     大嶋会長は60歳でそれまでやってきた養鶏事業をすべて清算、次男に引き継いで引退し、新会社エビアンを起こし、農業関係のさまざまな新規事業に取り組んできました。農業のためフィリピンに買った土地から、はからずもマンガン鉱石が出て、鉱物資源も扱うようになり、日本とフィリピンと中国を行ったりきたりの忙しさです。
     現在、上海での卵の生産は委託農場で1万羽の規模ですが、将来は5万羽、20万羽の自家農場を建設したいということです。
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