義烏ビジネス |
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上海市から西南へ300km、浙江省の省都杭州市から170km、浙江省金華市に属する県級市で義烏(イーウー)という町があります。ここは知る人ぞ知る小商品(軽工業品)市場の町です。人口170万人(戸籍人口70万人、外来人口100万人)、“中国では”比較的小規模な町ですが、町全体が卸売市場となっており、毎日世界中から20万人もの人が買い付けに来ています。 <農村から世界の市場へ> 義烏はもともと貧しい農村でした。とりたてて産業がないので、1970年代後半から、家内制手工業で作った日用品を行商していました。80年代のまだ物資の乏しい時代に、義烏は「商業を興して都市を建設する」という道を歩み始め、国有企業の在庫品を調達するなどして、小商品市場を建設しました。あらゆる日用品を扱っており、その品揃え、価格の安さから、各地のバイヤーが買い付けに来るようになり、現在の大市場に発展したのです。 現在、市場の総面積は260万㎡で、約5万8千軒のテナントが入っており、40万種類の品物を取り扱っています。1軒のお店に3分間ずつ立ち止まって毎日8時間見たとしても全部見るのに1年かかるということです。市場はさらに拡張中で、第3期工事170万㎡が2008年10月に竣工する予定です。世界最大の小商品市場であり、ここで定点観測される価格は「義烏指数」と言い、世界の小商品の物価指標となっているそうです。 <百均のふるさと> 日本で私たちがよくお世話になる「百円均一ショップ」の商品もその多くを義烏で仕入れていると言われます。輸入の経費まで含めてよく100円で作れるなと思うような商品がたくさんありますが、たしかに義烏に来てみると、1個数角(1角は1元=約16円の1/10)から1元2元という卸値で売られているのです。 では、さぞかし日本のバイヤーも多いのだろうと思いますが、日本の取引額は、アラブ首長国連邦、韓国についで3位です。1000箇所ある外国系買い付け事務所のうち、韓国が200箇所あるのに対し、日本はわずか12箇所です。 こちらの商品は、「安かろう悪かろう」の品物が多いので、商品を仕入れるとき、検品でかなりロスが出ることを覚悟しなければなりません。日本人は小さな瑕疵でもNGですので、ここでの仕入れはあまり向かないのかもしれません。「日本人は仕入れロットは小さいのに、言うことは細かい」とよく言われます。しかし、義烏の品揃えや価格の安さはやはり魅力です。 <買い付けの流れ> 義烏の市場にはあらゆる人種が買い付けに来ています。お店のほとんどは卸売り専門で、上海の市場などと違ってうるさく客引きもしません。また、商品を大変見やすく陳列しています。売り場は商品の種類ごとに分かれているので、バイヤーは、目指す商品の区画に行って、目当ての商品を探します。同じような商品がいくつもの店舗にあるので、品質や価格を見比べて、買い付ける商品を決めます。 たくさんの卸商がいますが、実際義烏に工場がある会社はわずかです。多くは広東省などに工場があり、注文した品物は工場から義烏の倉庫に運ばれてきます。義烏で商品を受け取り、そこからの配送はバイヤーが手配しなければなりません。交渉価格は「義烏渡し」価格なのです。 外国からの買い付けの場合は、自分で持ち帰るのなら現金買い付けも可能ですが、正規の輸出となると、日本からL/C(信用状)を組んで振り込まなければ送ることができません。 最大の問題は、検品と輸送ですが、そこに目をつけ、日本人で、義烏での買い付けを代行したり、検品をしたりといったことを生業にしている人もかなりいるようです。 <義烏の楽しみ方> 義烏の市場は卸売業者ばかりですが、在庫があれば、一般客に小売してくれる店もあります。また、小売はしないといっても、サンプルでほしいと交渉すれば売ってくれます。小ロットの箱買いは問題なくできますので、例えば、会社等で大勢に配る品物や、文房具のまとめ買いなどができます。 とにかく広大な市場ですので、必ずなにか掘り出し物が見つかります。 義烏のおもちゃ市場で見た車のペーパークラフトが面白いなと思い、卸値を聞きますと、1個1元7角ということでした。先日、上海市内で同じものを売っていたので、ためしに値段を聞くと35元と言ったのであきれてしまいました。 <これからの義烏> 石油価格の上昇で、中国の工業製品も値上がりしてくるでしょう。そうした中、「百均」のような品物の仕入れは苦戦を強いられてくるでしょう。 また、義烏の市場が有名になるにしたがって、テナントブースが次々と転貸され、家賃が上昇し、コストに反映してくるとの問題も出ています。中国各地に義烏を真似た市場も次々とできてきています。 インターネットの普及により、義烏まで出向かなくても仕入れができるようになりました。実際、義烏の業者も、バイヤーが直接来ずに、ネットや電話だけで注文を受けているところも多いようです。 それでも、さらに40億元もかけて1万7千平米増設しようという義烏市の強気の姿勢を見ると、まだまだ義烏ビジネスにかげりがさす様子ではありません。 |
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