日中経済協会上海事務所 大分県経済交流室 駐在員レポート
ニセモノ天国 中国
     2007年はイノシシ年、「猪」は中国ではブタのことで、旧正月の春節は街のいたるところでブタの飾りが見られます。ブタ年にちなんでミニ豚をペットとして買う人も多く、これまで150300元だったものが280400元と40%も高騰したそうです。ところが、新聞によれば、売っているミニ豚の90%はニセモノだということです。ニセモノは育てていくうち、50キロ、100キロの大豚になってしまうのです。今年の暮れには街中をたくさんの捨てブタがうろうろするようなことにならないことを祈ります。

     今回は市場に出回るニセモノについてお話します。

<ニセブランド市場>

     2006630日、上海市淮海中路のニセブランドマーケットとして有名な襄陽市場が閉鎖されました。襄陽市場には800余りの衣類や靴、かばん、アクセサリー店が軒を並べ、その多くはブランド物のコピー商品を取り扱っており、外国人の観光スポットになっていました。最盛期は毎日平均5万人の買い物客を集め、外国人も毎日3千人以上訪れました。1年間の売り上げは5億元(約75億円)にのぼりました。2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博を控えた中国にとって、こうしたニセモノ市場が堂々と営業していることは国の汚点であり、襄陽市場を撤去することは国際社会に対してニセモノを許さない姿勢のアピールだったといえます。

     ところが、襄陽市場を撤去しても、結果はテナントがごっそりと他の市場に移転しただけでした。襄陽の元テナントは主に七浦路服飾城、亜太盛匯、龍華服飾礼品市場等に引っ越して相変わらずニセモノ販売を続けています。

<音楽・映像ソフト>

     上海の街角のいたるところに、音楽CDや映画やテレビドラマのDVDを売る店があります。また、露天商もたくさんいます。DVD1枚5元から7元と大変安く、値段からいえば明らかにコピー商品です。しかし中には見た目では判断できない商品もあり、「安いからニセモノだ」と思わなければ仕方ないものもあります。逆にいえば、デパートや大型書店など、「ちゃんとした」店で売っているソフトも本物かどうかわかったものではないのです。種類も豊富で、中国映画、ドラマはもちろんのこと、洋画や韓国ドラマ、日本の映画、ドラマなど、昔のものから新しいものまでさまざまな作品が出ています。こんなものをよく見つけてきたなあと思うような日本の昔のアニメなんかもあります。

     映画も、上映中の最新作品がすぐに出回りますので、映画館はあがったりです。

     日本のコンテンツ業界はこうした状況を知っているので、中国への売り込みに大変消極的なところが多いそうですが、正式に売らなくてもどうせコピーソフトやニセキャラクターグッズが出るのですから、逆に攻めていったほうがいいのではないかとも思います。

<こんなものまでニセモノが>

     骨董市場などに行くと、陶磁器や青銅器、古銭、時計などさまざまな品物が並んでいますが、本当に目利きでないと何が本物で何がニセモノかわかりません。まずはニセモノだと疑ってかかったほうがいいようです。中国文化大革命時代の切手は現在非常に高い値打ちがついていますが、これもニセモノが出ています。

     地下鉄で上海市の地図を市販より安い3元くらいで売り歩いている人がいますが、それにもニセモノがあります。本物の地図はニセモノ防止のシールが貼られています。ニセモノだとデータが古かったりする場合があります。

     街角で「タバコタバコ」とタバコを売る露天商がいますが、タバコにもニセモノがあります。バーに行くと出てくるウイスキーにもよくニセモノがあります。

     身分証名書や大学の卒業証書も数百元で作るところがあるそうです。

     コンサート会場の入り口にはいつもたくさんの黄牛(=ダフ屋)がいます。ニセチケットをつかまされて入場拒否されている人もよく見られます。

<ニセモノはなぜなくならないか>

    日本の企業がどんなニセモノで被害を受けているか、ジェトロ北京センターにニセモノ展示館がありますので、興味のある方はご覧ください。

    http://www.jetro-pkip.org/photo.htm

    WTO(世界貿易機関)の加盟国となった中国は、知的財産権の侵害について国際社会から非難を浴びていますが、なぜニセモノはなくならないのでしょうか。

    中国は「世界の工場」といわれ、あらゆる工業製品が生産されていますから、どんなニセモノでも作る技術があります。人口も多く、国土も広いので、隠れてコピー商品を作ることはきわめて簡単なことです。それをひとつひとつあらいだし取り締まることはきわめて困難です。

    ニセモノ産業が地域の基幹産業になっている郷鎮や村もあり、地方政府としてはそれをつぶしてしまうと失業者があふれてしまうので、あまり積極的に取り締まれないという状況もあります。

    国民性の問題もあります。中国人は起業家精神が旺盛で、どんどん商売を始めます。ある商売が成功すると、類似業者が雨後の筍のように続々と現れます。有名な店の一文字違い店などが次々できます。真似が悪いことだとは思っていませんし、知的財産という概念はあまりありません。また、知っていたとしても順法意識はきわめて低いのです。

    人をあざむいて品質の悪いニセモノを売りつけるのはもってのほかですが、ニセブランドやコンテンツソフトに関しては、消費者もそれと知っていながら購入しており、需要があるがゆえに供給されているのです。消費者も犯罪の加担者であり、その多くは私たち外国人です。

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