日中経済協会上海事務所 大分県経済交流室 駐在員レポート
過去の不幸
    「1937年、鬼子が中原に進出した。まず盧溝橋を打ち破り、次に山海関を打ち破り、汽車は済南まで走った。鬼子は大砲を引き、八路軍は引金を引く。ねらいを定めて通訳を撃ち殺し、両足ふんばり西の空を見る。」これは中国のテレビで何度も再放送される人気ドラマ『小兵張嘎(チャンガー)』の主題歌で、中国人なら誰もが一度は聞いたことがあるだろう。抗日戦争で活躍する少年の物語だ。「鬼子(グェイズ)」というのは日本兵の蔑称だ。
    抗日戦争を題材にしたドラマは数限りなく制作されており、現代中国人にかなり偏った「歴史認識」を刻み付けている。日本人は中国人に対し極悪非道を尽くしてきた得体の知れない恐ろしい民族であると。もはやそれを実際に経験したものはほとんど生きていないなか、今の若い世代はドラマや学校教育によって刷り込まれた歴史が現実であると認識する。
    それに対して、日本人の多くは1937年がどういう年だったかを忘れてしまっており、自分たちの親や祖父母が中国でどういう経験をしてきたかを知ろうとしない。問題点は、歴史認識の違いではなく、我々の歴史認識の欠如というところにあるのではないだろうか。たしかに日本人は多くの中国人を殺戮し、苦しめてきた。なぜそうなったのか、そのプロセスを振り返り、反省し、同じ過ちを繰り返さないことが大切だ。日本人は単なる「鬼」ではなく同じ人間なのだとわかってもらうために、歴史解釈についてお互い議論を戦わせてもいいと思う。
    今年は盧溝橋事件、そしてそれに続く第二次上海事変、南京事件から70年という節目の年だ。中国にかかわる日本人は、その時代についてもっと認識を深めるべきである。
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