日中経済協会上海事務所 大分県経済交流室 駐在員レポート
上海エンターテインメント事情
     2007102日から11日にかけて、上海でスペシャルオリンピックスが開催されました。競技自体はあまり話題に上らなかったのですが、イベントとしては国家を挙げて盛り上げており、開幕式では胡錦濤国家主席も出席し、大掛かりなショーの演出がされました。上海体育場を埋め尽くすような数のダンサーが踊りを披露し、さすが「人海戦術」の国だなと思いました。

     地方の会議やイベントでも必ず開幕式や招宴などでショーがあり、その地方の合唱団や舞踊団などが出てきますが、いずれも水準が高く、芸能の層の厚さを感じます。

     今回は上海のエンターテインメントについてご紹介します。

<音楽>

     上海ほどの大都市となりますと、エンターテインメントビジネスもたいがいのものがあって、世界的なビッグアーチストの公演も頻繁にやってきます。しかし、こういう状況になったのは、改革開放政策が始まってからのことでしょうから、まだ観客層は未成熟です。例えばクラシックコンサートですと、おしゃべりをしたり写真を撮ったりと目に余るマナーの人が多くいます。そういう人の多くはタダの招待券をもらってきた人で、休憩の後にはいなくなっていますが。ファン層が薄く、あまり知識がないので、世界的に有名な音楽家のコンサートでも当日券が買えることもありますが、テレビでよく目にする人のコンサートの場合は、教育熱心な富裕層が、子供に聞かせるためにすぐチケットが売り切れます。

     クラシックのコンサートホールは上海大劇院、東方芸術中心、上海音楽庁などが主で、この規模の都市にしては少ないと思います。

     ポップスやロックなどの有名アーティストのコンサートは、八万人体育場やその隣の上海大舞台、虹口サッカー場など何万人も観客を収容する会場で行われます。チケットは200元~2000元(3200円~32000円)と物価水準からいえば非常に高いのですが、それでもよく売れています。会場の入り口にはいつも黄牛(ダフ屋)が出ていますが、ニセモノのチケットもよくあるので要注意です。

     市内にはジャズなどの生演奏の聞けるライブハウスやバーもたくさんあります。まだ演奏者も客もほとんどが外国人です。将来はこうしたところから中国発のジャズアーティストが育ってくるのではと期待されます。

 <舞台、演劇>

     中国人は本当に踊り好きで、見るのもするのも好きなようです。早朝の公園では太極拳や京劇の振り付けを習っている人を多く見ますし、週末の夜の公園では社交ダンスをしています。舞台芸術も、舞踊劇からバレエまでさまざまな公演が毎日のようにどこかで上演されています。

     雑技(サーカス)は市内に3~4箇所、上海雑技団の常設雑技場があり、観光客に人気があります。上海の劇・コンサート場で一番人が入っているのは上海体育館で、年間42万人、1度に1万人以上入るのでもっともなのですが、それに次いで多いのはなんと上海雑技団の上海商場劇院で、年間34万人です。毎日ほぼ満員ということです。

     それに比べ、伝統芸能の京劇は常設の劇場が1か所ですが、上海市民にはあまり人気がないようです。たいがい当日券が残っています。

<映画>

     映画は新作が公開されると同時に海賊版のDVDが出回ります。映画館の料金が30元~60元(480円~960円)もするのに、DVDは16元~10元(公開初期は高くなります)くらいですので、映画館に行ってみる人はほとんどいません。それでも多数の映画館がつぶれずにやっているのが不思議でなりません。それどころか、映画の興行収入は伸びているということです。とはいえ、20年前上海に800か所以上あった映画館が今は200か所あまり、映画館に行く人数はジリ貧といえましょう。映画館収入の数十倍規模の海賊版市場があるのです。

     映画館の席はすべて指定席で、恋人同士座れるペア席もあり、やはり今も昔も映画館はデートの定番、そういうお客さんで成り立っているのかもしれません。

     上映作品は許可される外国映画の輸入総量が決まっており、外国映画のほとんどはハリウッド映画です。今年は、『ドラえもん』が公開され、日本のアニメ映画としては初めてで画期的なことでした。

 <スポーツ>

     中国ではスポーツはあまりさかんとはいえません。スポーツ観戦も、テレビではいろいろ放映はされていますが、熱狂的に盛り上がっているものはありません。

     国内のサッカーリーグも、ひところのブームは去り、今は低迷しています。野球のリーグにいたっては存在を知らない人のほうが多いくらいです。スポーツの人気を高めるためにはやはりスター選手がいないと盛り上がりません。アメリカのプロバスケットリーグで姚明(ヤオ・ミン)が活躍しているため、NBAはテレビでもやっていますし、バスケットをする人口は増えています。

     スポーツに関してはまだ商業ベースに乗るエンターテインメントにはなっていないようです。来年の北京オリンピックでブームに火がつく競技もあるかもしれません。

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