日中経済協会上海事務所 大分県経済交流室 駐在員レポート

間違えやすい中国語

     中国語も日本語も同じ漢字を使う言語だから、言葉ができなくても筆談すればある程度意思の疎通はできるだろうと思っている方も多いようですが、それは大間違いです。確かに同じ意味で使われている単語もたくさんありますが、文法が根本的に違いますし、簡略化した簡体字が多いので、筆談はなかなかやっかいです。やはり、まったく異なる言語と考えたほうがいいでしょう。一番注意したいのは、同じ字を使っているため、うっかり安易にそのまま日本語に訳してしまい、意味が違ってしまうということです。

<日常生活>

     「新聞」は「ニュース」という意味で、日本語でいう新聞は「報紙」、「手紙」はトイレットペーパーのことで、手紙は「信」です。「汽車」は自動車で、汽車は「火車」です。デパートに「女装」、「男装」の売り場がありますが、婦人服、紳士服のことです。

     「工作」は仕事のことで、「勉強」は「強制する」という意味になります。

     「老婆」は奥さん、「娘」はお母さん。「愛人」は夫、妻のことで、「情人」が愛人、恋人です。

     「中学校」は中学校(初中)と高校(高中)の両方で、「高校」といえば大学を指します。

     「冷飲」は冷たい飲み物をイメージしますが、アイスクリーム類のことです。

     「副食品」はおかずのことではなく、穀物、油以外の農畜産品のことです。

     「麺」は麺類ではなく、小麦製品の総称で、「麺包」はパンのことです。「麺包車」はパン屋の車ではなくて、マイクロバス(ワゴン車)のことです。

     「湯」はスープで、お湯は「開水」と言います。大分からの観光宣伝のプロモーションで、温泉入浴剤を配ったことがありましたが、それに「○○湯」という表示があったので、もらった人が飲んでしまうのではないかととても心配でした。

     飛行機の「降落」は着陸で、「墜落」という意味ではないのでどうぞご安心を。

<魚や野菜>

     中国にもともとないような魚や野菜・果物は訳語に苦労します。

     ある日本料理店で、カンパチに「鰤魚」(ブリ)という訳をつけていました。これまで上海市場にブリがなかったからそれでもよかったのでしょうが、本物のブリが輸入されるようになったらどうやって区別するのでしょうか。ちゃんと調べれば、カンパチは「高体」とか「紅甘」、ブリは「鰤魚」とか「青甘魚」という訳語があるのです。「鯖」(サバ)という漢字は中国語にはなく、苦しまぎれに「青魚」などと訳したりしますが、中国には「青魚」という淡水魚がいるので、混乱してしまいます。中国語でサバは「鮐魚」です。

     中華料理で「鱸魚」という魚がよく出ますが、たいがいは海の「スズキ」(花鱸)ではなく、淡水の「ブラックバス」(加州鱸魚)です。

     ついでに、「胡椒鯛」はコロダイのことで、日本のコショウダイは「花尾胡椒鰓」だそうです。

     野菜では、「人参」というと朝鮮ニンジンのこと、ニンジンは「胡蘿蔔」、ダイコンは「蘿蔔」です。

     「柚子」は中国ではザボンのように大きな果実です。日本でいうユズは「香橙」(ダイダイ)に近いようです。カボスの訳語はまだありません。今後、中国でカボスを売り出すためには、その場しのぎの当て字ではなく適切な訳語を用意する必要があるでしょう。

<ビジネス>

     「単位」という語は日本では見慣れませんが、中国では会社とか行政組織などの事業所といった意味でよく使われます。行政組織などの「機構」は、「機関」と訳すとしっくりきます。

     「貿易」という語は海外貿易をイメージしがちですが、中国語では広く「取引」という意味で、国内での売買にも使われます。

     「批准」という語は日本語では条約などにサインすることですが、中国語では「許可」という意味でよく使われています。したがって「批准書」は許可証のことです。「経営」は、日本語と同じ意味でも使われることもありますが、「販売」と訳した方が適切な場合が多いようです。「合同」というのは契約書のことです。

     「特許」は日本語と同じ意味の特許のほか、ライセンスのことも指し、「特許経営」というとフランチャイズのことです。

     数字のいい方にも注意がいります。口語で「一百八」などと言うと、108元ではなく180元のことです。商店などの割引表示で「7折」は3割引ということで、7割引ではありません。「何倍」というのは日本と同じですが、「加2倍」などと「加」や「増」という動詞が伴うと、2倍を加えるということで「3倍」になります。

     翻訳会社などに、説明書や契約書の翻訳を依頼したとき、ここで例にあげたような、日本語と中国語で同じ漢字を使いながら意味が違う単語において、安易な直訳をするかどうかで、その翻訳者の言葉の理解度がある程度判断できるのではないでしょうか。

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