上海日本食事情 |
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上海にいる日本人の数は、居留届を出している人が約4万人、出張者等を含めると常時10万人ほどの日本人がいるといわれます。日本人の数が多いこともあって、市内にはさまざまなスタイルの日本料理店が400軒あまりあります。内陸の地方都市ですと、湖北省武漢市で12軒程度、吉林省長春市に4軒程度しかないということですから、上海は中国でも特殊な都市といえるでしょう。
<食べ飲み放題の店> 一口に日本料理店といっても、いろんなスタイルがあり、総合的な日本料理店のほか、最近は焼肉屋、鉄板焼屋、すし屋、お好み焼き屋、焼鳥屋、ラーメン屋などの専門店も多くなっています。中国の日本料理店独特の営業方法で、「食べ飲み放題」のお店も多数あります。98元で食べ放題とか、168元で食べ飲み放題といった形で何でも注文できるシステムですが、いろんな種類の料理を大勢で食べるのを好む中国人の嗜好にあっているようです。日本料理は値段が高いので、まだまだ客層は日本人が主流ですが、こうした食べ飲み放題は、中国人にとって日本料理の入門コースの役割を果たしていると言ってもいいでしょう。食べ飲み放題の場合、素材やプロセスが低コストで作られますから、口の肥えた人になると、高くてもいいからいいものを食べたいとなり、最近は食べ飲み放題のない高級和食店との二極分化が進んできています。以前は素材の仕入れ先も限られており、どの店も同じような素材しか手に入らなかったのですが、最近は中国内の調達先も増え、日本からの輸入食材も増えたため、こうした高級店化も可能になったのです。 <食材の調達> 日本料理といっても食材のほとんどは中国国内で調達されています。日本からの食材は、輸入した場合のコストが高いことと、米や野菜、肉などは検疫上輸入が禁止されているため、ほとんど使われません。近年、中国でも良質のジャポニカ米が栽培されるようになるなど、国内調達の食材の品質も向上しています。日本式の調味料、酒、海鮮などで、国内で調達できないものは、日本から輸入されたものを使用します。てんぷら油や小麦粉などは日系企業が中国内でも製造をしていますが、こだわりの料理店では、同じメーカーのものでも、日本製の品質がいいからとわざわざ輸入品を使っているところもあります。 魚は、鯛、ひらめ、かんぱちなどは国内養殖できるので、安価で入ってきます。また、中国人にもっとも人気のあるサーモンは、北欧産が主流です。ぶりは、中国ではまだ養殖ができない魚のひとつで、大分、長崎、熊本、鹿児島などのものが昨年から相次いで輸入されるようになりました。 牛肉は、狂牛病がらみで日本からは輸入できません。市内の料理店で、「神戸牛」や「松坂牛」を出している店も散見しますが、にせものか、本物だとすれば密輸品です。「黒毛和牛」とされている肉のほとんどは、山東省の黒毛牛牧場のものや、オーストラリア産の黒毛牛の肉です。牛肉も日本人の口にあった品質のものが、ここ1~2年で流通するようになってきました。 日本製品で、日本料理店にもっともニーズのあるものといえば、各種調味料です。日系の調味料工場もたくさん進出してきましたが、まだまだ手に入らない調味料が多いということです。カツオ節、みりん、マヨネーズなどは大きなスーパーでもローカル系ではほとんど置いていません。 <日本“風”料理> 400軒も日本料理店がありますが、日本人調理人のいるところはほんのわずかです。地場系の日本料理店に行くと、日本人が「あれっ」と思うような「日本風」のものがときどきあります。具のない茶碗蒸しとか、カレーライスのてっぺんに漬物がのっていたりとか、てんぷらの衣がホットケーキの味だったり、から揚げに衣がついていたり(鳥天?)、意外な出会いが楽しめます。以前、アイスクリームのトッピングにミントのかわりにパセリが乗っていてびっくりしましたが、先日はチョコチップだと思ったら粉末コーヒーが乗っていました。 一方、中国人向けに展開する回転寿司チェーンのように、わざと中国人の嗜好に合わせた商品開発をしているお店もあります。 <上海日本料理協会> 2005年秋、上海市内の日本料理人らで構成する「上海餐飲行業協会日本料理専業委員会(上海日本料理協会)」が、上海餐飲行業協会(上海レストラン協会)傘下の正式団体として発足しました。 上海日本料理協会は、毎月の定例会で、会員間の交流の場を設け、食材調達の情報交換を行ったり、調理師を対象とした日本料理研修会を開催したりして、調理師の資質の向上と日本の食文化の普及をはかっています。 上海で日本料理店が爆発的に増えたのはここ数年のことで、日本料理はまだ日本人社会内部のもので、中国人社会への浸透はまだ始まったばかりです。書店に行っても料理本のコーナーに日本料理を紹介する本は皆無に近い状態です。日本からの食材の販路も、まだ日本人社会の小さなマーケットしかありません。巨大な中国人マーケットに売り込むためには、まず日本の食文化を知ってもらうことから始めなければなりません。 |
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