日中経済協会上海事務所 大分県経済交流室 駐在員レポート
「もったいない」を輸出しよう
     中国料理のレストランに一人二人で入って困ることは、料理の量が非常に多いことだ。ひとつの料理を注文すると、大きな皿にてんこ盛りで出てくる。大勢で食べるのが基本の量なので、少人数では食べきれない。残った料理は、頼めば「打包」(ダーバオ=持ち帰り)もできるのだが、そうもいかない場合は「これがごみになるのか」と思うともったいない気持ちでやりきれない。

     中国のもてなしでは、お客が食べきれないくらいの料理をふるまうのが流儀だ。そして中国ビジネスには接待がつきもの。こうして毎日大量の食糧が捨てられている。

     かつて食糧の輸出国だった中国は2004年に輸入国に転じた。世界の人口の1/5を抱える中国の消費動向は、世界の食糧経済に影響を及ぼす。中国人がごみになる料理をちょっと減らせば、世界の穀物価格が下がるだろう。

     食べ物だけではない。

     金持ちの間ではまだ「消費は美徳」という考えも根強く、金さえ払えばいいんだということで、電気や燃料を浪費することを何とも思っていない。スーパーに行けば、自分のものではないから店員はいくらでもレジ袋をくれる。

     環境破壊・エネルギー問題は中国では実は非常に深刻な状況になっている。しかし、環境保全とか省エネとかいう思想はやっと一部で啓発が始まったばかりである。日本がこれから対中国輸出を進めていくべきものは、環境技術と「もったいない」の精神だろう。

     もっとも、中国人に節約という観念がまったくないのかというとそうでもない。私の上海語のテキストにこんな例文があった。「食事の後、ガスのとろ火に水をかけておいたから、ちょうどいい温度になっている。顔と手足を洗って寝なさい。」

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